民主主義国家の基本原則である文民統制(シビリアンコントロール)を逸脱する自衛隊活動が、明らかになった。

 陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が、冷戦時代から、首相や防衛相(防衛庁長官)に知らせず、独断で海外に拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきたというのだ。陸上幕僚長経験者ら複数の関係者が、共同通信の取材に証言した。

 証言によると、拠点はロシアや中国、韓国、東欧などに設けられてきた。海外要員は自衛官の籍を外し、他省庁の職員に身分を変えて派遣されることもある。収集した軍事や政治、治安情報は、出所を明示せずに陸幕長と情報本部長に上げる仕組みという。

 発覚を防ぐため、組織内でもごく限られた関係者間で引き継がれてきた。資金の予算上の処理も不明だ。

 武力組織である自衛隊が、最高指揮官の首相や防衛相の指揮・監督を受けず、国会のチェックもなく海外で活動する-。民主主義国家の根幹を脅かす行為であり、決して許されない。

 元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は、深刻な外交問題を引き起こす危険があると指摘し、「日本のインテリジェンス(情報活動)の恥」と批判した。

 報道を受け、小野寺五典防衛相は28日の参院国家安全保障特別委員会で「しっかり確認していきたい」と述べた。当然である。長年にわたり法令上の根拠のない活動が秘密裏に行われてきたことで、政府の危機管理能力も問われる。

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 安倍政権下で、自衛隊の存在感がこれまでになく増している。

 政府は12月、外交・安全保障政策の司令塔となる国会安全保障会議(日本版NSC)を発足させる。その事務局となる国家安全保障局には自衛官も登用する方針だ。政権の意思決定に直結する組織の前線に制服組が立つ。文民統制の原則に照らして問題はないか、あらためて議論すべきだ。

 防衛省は8月にまとめた機構改革案で、自衛官の「制服組」と内局の「背広組」で分担してきた警戒監視などの部隊運用を、制服組主体に改め、一元的な運用を推進することとした。緊急時に迅速な意思決定を図るのが目的だが、やはり文民統制の形骸化が指摘されている。

 文民統制は、戦前に軍部の暴走を許した反省に立つものだ。その原点にいま一度立ち返る必要がある。

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 政府は、NSCの運用には特定秘密保護法案が不可欠として、成立を急いでいる。

 「別班」活動は今回、関係者の証言で明らかになった。だが、国民の「知る権利」や報道の自由を侵害する恐れのある同法ができれば、関係者が萎縮して取材に応じず、あるいは恣意(しい)的な秘密指定によって、表に出ると都合の悪い「事実」が闇に葬られる可能性がある。

 指揮命令系統から外れた部隊の独走は、国の外交や安全保障にとって極めて危うい。防衛省と陸自は「別班」の存在を認め、全容を国民に明らかにすべきだ。