二重三重にフェンスで囲まれた秘密施設に外国の捕虜たちが運び込まれ、カービン銃を手にした沖縄の警備員が監視する。復帰前まで、そんな光景が実際にあった

▼危険性を知らされないまま素手で猛毒を扱っていた人、ベトナム戦争の謀略ビラを作らされた人。労働組合のない時代に従業員の権利を主張して軍ににらまれた体験談からは、命懸けの緊迫感が漂う

▼有害物質や爆発物管理のずさんさも、人権を抑圧する諜報(ちょうほう)活動も、米軍にとっては隠したい情報だろう。しかしその中にこそ、県民の命に関わる問題や歴史にとどめるべき重大な事実が潜むと、数々の証言は伝える

▼昨年4月から1年3カ月にわたって本紙で連載した「基地で働く 軍作業員の戦後」が単行本になった。収録されている従業員の証言は、基地の裏面史を浮かび上がらせる

▼連載が終わってわずか4カ月後、特定秘密保護法案が国会に提出された。際限なく「秘密」の範囲が広がれば、米軍統治下のような社会に逆戻りしかねない。元基地従業員の一人は「また重苦しい時代になる」と心配する

▼30日午後2時から、沖縄大学で本書発刊に合わせた公開講座が開かれる。取材した記者が登壇し、証言の意義を語る。国民の「知る権利」が危うい時期だからこそ、報道の役割とは何かを考えたい。(鈴木実)