米軍基地従業員を取材し書籍化された本紙の連載「基地で働く」に関わった記者が30日、那覇市の沖縄大学で連載に込めた思いや取材のエピソードを語った。土曜教養講座の一環で約80人が参加。まとめ役をした磯野直記者は「名もなき人たちに徹底的にこだわった。基地で働く現役世代に読んでほしい」と話した。

連載「基地で働く」に込めた思いや、取材エピソードを語った磯野直記者ら=那覇市の沖縄大

 磯野記者は、前日まで取材の約束をしていた相手が、基地で働く子どもへの影響を心配して涙で取材拒否したことを明かし「数々の取材拒否にあった。地域の目や負い目、現在も基地があることが現在も証言の妨げになっている」。

 吉田伸記者は米中央情報局(CIA)があった知念基地の元従業員を取材。当時の写真や地図を示し、取材先の記憶を呼び起こしていったことを振り返った。対象者が高齢になっていることから「70代~80代の人がほとんど。今取材して良かったと思う半面、亡くなった人もいて、遅かったとも言える」と話した。

 石底辰野記者は、ベトナム戦争で殺気立ち、耳を食いちぎるほど激しい米兵同士のケンカを目にした元従業員の話などを振り返り、「生きるために必死、とみなさん異口同音に話した。フェンスの中に、私たちが取材していなかったもう一つの生活文化圏があった」と語った。

 この後、元沖縄タイムス軍事担当記者の國吉永啓さん(77)が米軍統治下の基地取材について講演。米国民政府布令などで厳しく取材活動を制限される中でも、米戦略空軍が嘉手納基地のB52戦略爆撃機に水爆を積んでパトロールしたという「水爆パトロール」を報道した、と紹介した。

 また、第7心理作戦部隊が新聞死亡広告から沖縄の人脈を分析して統治政策に反映させたことや、黒人兵士による女子高校生刺傷事件について人種差別問題を持ち込んで一兵士の問題に矮小(わいしょう)化した米軍の政策などを振り返った。