麻酔科医を知っていますか? 手術を受けた経験のある方は覚えていらっしゃるかもしれませんが、そうでなくても無理はありません。麻酔科医は患者さんが起きているとき(意識がはっきりしているとき)に接する時間が短いからです。今日は、普段あまり見る機会がない麻酔科医の仕事について紹介します。

 まず、麻酔科医ですが、何人くらいいるでしょうか? 少し前は「麻酔科医不足、麻酔科医がいないから手術ができない」と報道されていました。2010年の厚生労働省の調査では、麻酔科医は1万48人、全医師の3・41%、人口10万あたり7・85人でした。06年の調査では8679人であったので順調に増えてきています。それでも、全体の医師不足があるので、足りているという感じはありません。沖縄県はどうでしょうか? 沖縄県の麻酔科医は108人、人口10万あたり7・75人(全国29位)と全国平均並みです。

 ところで、よく○○科と耳にするとは思いますが、実は医師には標榜(ひょうぼう)の自由があり、○○科と名乗るのは各医師の裁量に任されています。しかし麻酔科は専門性が強いので、厚生労働省の許可を受けた医師でなければ麻酔科医を名乗ることができない唯一の診療科です。国も認める、ちょっと特殊な科でもあります。

 私たち麻酔科医の仕事を一言で表すと、全身管理です。呼吸、循環など生命に直結する部分を管理しています。麻酔科学は「手術中の痛みや意識をとること」から始まりましたが、現在では「外部からのさまざまな侵襲(例えば手術や痛み、感染)からいかに人体を防御するか、侵襲に対する人体の反応をどう制御するか」を扱う生体管理学へと進歩しました。それに伴い、麻酔科医の役割も大きく変貌し、手術室だけに留まらず、集中治療(ICU)、救急、ペインクリニック、緩和医療とさまざまなところで麻酔科医が活躍しています。

 また、麻酔科医は「いかに安全に手術を行うことができるか」を毎日考えているので、医療安全管理も得意としています。病院のいろいろなところに関わる仕事なので、他の科の医師のみならず、全ての医療従事者と協力するチーム医療のコーディネート役をすることも多いです。

 少し麻酔科医という仕事が見えてきたでしょうか? 病院の縁の下の力持ちのような感じが一番しっくりくると思います。安全で最適な医療を提供できるよう、私たち麻酔科医は研鑽(けんさん)し続けます。(笹倉渉 北部地区医師会病院)