中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定し、日本や米国など関係各国の緊張を高めている。

 昨年9月の日本政府による「尖閣国有化」以降、日中関係は悪化し、中国公船による領海侵犯が相次いでいる。中国は、事態をさらに悪化させる挑発的な措置を撤回するべきだ。

 防空識別圏は、領空侵犯に備えるため領空の外側に設定した空域。同空域に侵入した場合、迎撃戦闘機の緊急発進(スクランブル)の対象となる。中国が設定した防空識別圏は、日本が既に設けている防空識別圏とも重なり合っている。中国は識別圏内の航空機が命令に従わない場合「防御的な緊急措置を取る」と警告している。

 米国は「東シナ海の現状を変更し不安定化させる」などと中国を批判。核搭載可能なB52戦略爆撃機2機を防空識別圏内に事前通告なしで飛行させた。「尖閣諸島の領空を含むもので受け入れられない」とする日本も、自衛隊機を識別圏内に飛行させた。

 その後中国は、防空識別圏に入った米軍機や自衛隊機に対し、空軍がスクランブルをかけたと発表するなど、軍事的なけん制が続いている。

 空でのトラブルは大惨事につながりかねない。2001年4月には、米偵察機と中国戦闘機が南シナ海上空で接触、中国機が墜落する事故が起き、米中関係が緊張した。

 中国の防空識別圏と日本の識別圏が重なる空域がある。最も懸念されるのは、両国間に軍用機同士の「不測の事態」を回避する危機管理メカニズムが存在しないことだ。

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 日米双方ともに中国の防空識別圏設定を認めないとする立場は共通しているが、民間航空機への対応に食い違いが出ている。

 日本は、中国の求める飛行計画の提出をしないよう日本の航空会社に要請した。一方、米国は「中国の要求を受け入れたわけではない」としながら、米民間航空会社に対し飛行計画の提出を容認する方針を決めた。すでに米航空大手3社が、中国当局に対し、対象空域を通過する便の飛行計画を提出し始めたと報じられている。

 安倍晋三首相は「米政府が飛行計画提出を要請したことはないと外交ルートを通じて確認している」と説明。日本政府は軍用機の飛行を含む米との連携について、来日したバイデン副大統領との会談で確認する意向だが、民間航空機の安全確保は、何よりも最優先されるべきである。

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 中国は識別圏設定に「特定の国に向けたものではない」と強調するが、領土問題などで対立する日本を念頭に置いた動きであるのは明らかだ。

 安倍政権は、国家安全保障会議(日本版NSC)の創設や島しょ防衛を盛り込んだ新防衛大綱など、安全保障政策の大転換に突き進んでいる。

 しかし、軍備に依存した安全保障は軍事的なエスカレートと不信を招くだけだ。

 東シナ海の緊張緩和は、互いの国益にもつながる。日中首脳会談実現の糸口を探り、外交による関係改善を目指すべきだ。