以前、うつ状態の人々がつくった自助グループを取材した際実際の行動と、その結果、わき起こる感情のバランスを保つことで症状の改善を図る「認知行動療法」について知った

 ▼ある行動が呼び込んだ喜びや楽しみ、恐怖や苦痛と向き合いながら、解決につなげる。会合では、状態の安定した当事者が「家のドアを開けるのを迷ったら、まず外に出てみて」と仲間に呼び掛けていた

 ▼行動は成功となって喜びを生み、次に進む。体と心は一つだ。先日、沖縄美ら海水族館で開かれた講演会の取材で、それを再び思いだした。原因不明の感染症で尾びれの75%を失い、映画にもなった同館のイルカ「フジ」の、人工尾びれ開発に関する話だ

 ▼尾びれを失ったフジは思うように泳げない。仲間が力強く水をかき、ジャンプするプールの中で、孤立したという。担当者は「次第に水面に浮かび、プカプカ漂うだけになった」と振り返る

 ▼だが尾びれが改良されていくと、想定外の泳力とジャンプ力で、皆を驚かせた。「あの尾びれでは、まだジャンプは無理なはず。やっと仲間と泳げるようになったフジの、メンタル的な要素が大きかった」という

 ▼素直な喜びが、大きな力に代わったのだろう。人間も同じだ。時に立ち止まっても、行動すればきっと、何かが変わる。(儀間多美子)