単なる言葉の言い間違いと受け取るわけにはいかない。政府の本音が無意識に露呈したと捉えるべきだ。

 自民党の石破茂幹事長が自身のブログで、デモをテロになぞらえた発言である。

 特定秘密保護法案に反対するデモについて、石破氏は11月29日付のブログで、法案絶対阻止を叫ぶ大音量が鳴り響くのを聞きながら、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と書き込んだ。

 デモは市民の意思表示であり、憲法で保障された集会や言論、表現の自由である。

 石破氏がそれを知らないわけはない。批判が強まったため、今月2日付で「テロ行為と変わらない」とつづった部分を撤回する「お詫(わ)びと訂正」を掲載したが、あらためて「一般の人々に畏怖の念を与え、市民の平穏を妨げるような大音量で自己の主張を述べるような手法は、本来あるべき民主主義とは相容(い)れない」と主張している。

 石破氏は発言を撤回したのだろうか。

 法律はいったん成立してしまうと、拡大解釈を生み、暴走する危険性をはらむ。特に特定秘密保護法案は、秘密の指定範囲があいまいで、恣意(しい)的に拡大される恐れがある。

 特定秘密法案ではテロリズムについて「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要し…」と定義されている。

 政府に不都合なデモがテロとみなされる懸念は杞憂(きゆう)ではない。法が成立してからでは遅いのである。

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 法案の危険性が明らかになるにつれ、市民の反対運動が全国各地で広がっている。言論・法律関係団体だけでなく、学者や科学者、アーティストなど多くの団体が法案に反対する声明を出している。

 朝日新聞が衆院通過後に実施した全国緊急世論調査(電話)によると、法案に反対と答えた人は50%に上り、賛成は半分の25%にすぎない。

 法案は米軍基地を抱える沖縄に密接に関わる。安倍政権が目指す日米同盟の強化によって、外交防衛の情報がこれまで以上に隠蔽(いんぺい)され、情報を求めようとすれば罰せられるようになる。反対運動・監視活動が大幅な制限を受けることになるのは間違いない。

 県議会野党4会派、県憲法普及協議会、沖縄弁護士会の呼び掛けが緊急だったにもかかわらず、那覇市内で開かれた県民集会には会場からあふれるほどの市民が集まった。

 参加者の一人が石破氏の発言を捉え、「怒りよりも恐怖に近い」と語ったのは、物が言えなくなる「暗黒社会」を招きかねない法案の核心を突いている。

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 法案に対する懸念は国際的な機関・団体からも寄せられている。世界の作家らでつくる国際ペンが反対声明を出し、国連人権高等弁務官も強い懸念を表明。国際的な5人権団体の日本代表らが反対の立場を表明した。法案が世界の基準にいかに逆行しているかを示している。

 おごる「自民党1強」の安倍政権が国民の声を封じ、参院でも数の力を頼みにして押し切ることは許されない。