第19回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受けた沖縄タイムスの連載「基地で働く-軍作業員の戦後」の取材は当初、難航した。今も居座る米軍から感じる「守秘義務」の重圧や、ベトナム戦争や住民抑圧に加担したという罪の意識。退職後、時間がたっても、取材を断る元基地従業員が多かった。重い口を開いてくれた83人の証言は、沖縄戦後史の空白を埋めていった。

2012年4月から13年6月まで連載された「基地で働く」の紙面

 復帰前の基地従業員の物語はこれまで、主に労組の全軍労の視点からの闘争史として語られてきた。これに対し、連載は一人一人の仕事と生活の個人史を積み重ねる手法を取った。

 連載の過程で、それまで明らかになっていなかったアジア最大の米中央情報局(CIA)拠点CSG(キャンプ知念)や、ベトナム戦争で使う謀略ビラを作っていた第7心理作戦部隊の実態も明らかにした。 

 登場した職種はバーテンダーから航空機整備士、戦闘訓練のベトナム人役まで。CIAの謀略活動にも、住民が組み込まれていた。伊佐浜の土地接収、B52墜落、コザ騒動などの歴史的事件を米軍と民衆のはざまから見た貴重な証言も。

 多くの元従業員がそれぞれの言葉で「罪の意識」「占領者の下で働く苦しさ」を口にした。それでも取材に応じてくれたのは、次の世代に歴史の事実を伝えたいという思いからだった。

 連載は11月、本社から書籍化されている。

個人の体験にこだわる

 米軍占領下、基地従業員の多くは全軍労闘争の参加者数でしか語られてこなかった。連載では、徹底的に個人の体験にこだわった。証言してくれた83人の多くの根っこに、沖縄戦の体験があると痛感した。だからこそ貧困と良心のはざまで葛藤しつつも、魂までは売らなかったのだと思う。

 証言し、記録しなければ歴史上「なかった」ことにされかねない事態がこの国で起きている。沖縄戦と地続きの占領史を記録するには「時間がない」ことを胸に、次の取材を進めたい。(「基地で働く」キャップ・磯野直)