審議すればするほど「欠陥法案」のほころびが露呈した。これに泥縄式に対応することの連続だった。法案の危険性が明らかになるにつれ、全国各地で反対運動が急速に盛り上がり、国会議事堂が「人間の鎖」で包囲された。にもかかわらず、巨大与党は民意と向き合うことをせず、国会で議論を尽くすこともせず、反対の声を数の力で封じ込めた。安倍政権は向こう約3年間、国政選挙がないことを見越し、強行採決を繰り返したとしか考えられない。おごりの極みであり、有権者を見くびっていると言うほかない。

 特定秘密保護法案は参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決、成立した。

 市民生活や言論・表現の自由を脅かしかねない法律でありながら衆参両院の審議は「熟議」から程遠く、さまざまな危険性は解消するどころか、懸念はますます膨らむばかりだった。強権をむき出しにした巨大与党の横暴な採決強行で成立した法律であることを忘れてはならない。

 政府と自民党の関係は、過去に見たことがないほどの圧倒的な「政高党低」である。もともと自民党は良質なリベラル派を包括する懐の深さを備えていたはずだが、安倍晋三首相が2度目の政権を発足させてから国家主義的な傾向がさらに顕著になっている。従来の自民党政権と比較しても極めて特異、と言わざるを得ない。安倍首相の周りに思想的に同じ傾向を持つ議員らを配置し、リベラル派の声がかき消されている。

 周辺からは復古的で民主主義を否定すると受け止められるような言説が相次ぐ。

 自民党の同法案に関するプロジェクトチーム座長を務める町村信孝元外相は衆院国家安全保障特別委員会で「(知る権利が)国家や国民の安全に優先するという考え方は基本的に間違いがある」と国家優先の持論を展開した。派閥会合でも「野党が審議を遅らせようとしても、どんどん我々だけで前に進めればいい」と言い放った。熟議の姿勢など、鼻からなかったのだ。

 法案を担当する礒崎陽輔首相補佐官は、廃案に言及したテレビキャスターに対し、ツイッターで「放送の中立性を侵せば放送法違反だ」とつぶやいた。メディアへのあからさまな恫喝(どうかつ)である。

 むしろ米国の国防総省や日本が手本にした国家安全保障会議(NSC)の元高官の方が警鐘を鳴らした。沖縄返還交渉に関わったモートン・ハルペリン氏は「政府が持つ情報はその国の市民のものだ」と国際的な基本原則を踏まえ、「安全保障など特別な目的で情報の秘匿は可能だが、非常に狭く精密な限定をかけねばならない」と、恣意(しい)的、無制限に広がる恐れのある法案の本質的な問題点を挙げた。当然の指摘である。

 秘密保護は「知る権利」とのバランスが重要であることは言うまでもない。情報公開制度を充実させることなく、秘密保護だけが突出するのは制度設計の重大欠陥だ。

 驚くのは、国連人権保護機関トップのピレイ人権高等弁務官の懸念に対し、城内実外交部会長が「謝罪や罷免、分担金の凍結ぐらいやってもいい」と発言した、と報じられていることだ。

 思い上がりも甚だしい。国際的常識から外れた異様な反応である。

 高圧的な安倍政権の姿勢は、沖縄問題にも通じる。米軍普天間飛行場の辺野古移設問題しかり、八重山の中学教科書採択問題しかりである。国会議員や県連に「県外移設」の公約撤回を迫り、民意を力ずくでねじ曲げているのだ。

 与党の一角を占め、「平和の党」を自認する公明党には失望を禁じ得ない。政府原案に「知る権利」「取材の自由」への配慮規定を盛り込ませたが、具体的な担保となるとあいまいなままである。

 暴走する自民党のブレーキ役になるどころか、アクセルを踏み込み、後押ししているだけではないのか。

 巨大与党にすり寄った日本維新の会、みんなの党もだらしない。修正協議で原案をさらに後退させた。採決で退場するなどしたが、それなら修正協議に応じるべきではなかったのだ。巨大与党にのみ込まれるふがいなさが、自民党の増長を招いていることを認識しなければならない。