仲井真弘多知事は10日、就任から満7年を迎える。那覇空港第2滑走路建設費など2期目の最終年度となる2014年度概算要求は3407億円に跳ね上がり、失業率も改善傾向が続いている。一方、米軍基地問題では、オスプレイを強行配備されるなど具体的な成果は乏しい。普天間飛行場の移設問題では、名護市辺野古への埋め立て承認申請への可否判断を控え「県外移設」の選挙公約を堅持できるかに注目が集まる。

普天間飛行場の県内移設に反対し、県外・国外を求める県民大会への参加後、記者団の質問に答える仲井真弘多知事=2010年4月25日、読谷村運動広場

普天間続く正念場 方針転換 日米と平行線
基地問題

 仲井真弘多知事は米軍普天間飛行場移設をめぐり、辺野古案を条件付きで容認する立場から「3年めどの普天間の閉鎖状態」を公約に掲げ、2006年に初当選。その後、民主党政権が誕生し、移設先で迷走する中、県外移設へ方針転換。2期目は県外を堅持したまま辺野古案に伴う埋め立て申請が出され、可否判断が近づいている。

 就任直後は「1年くらいで普天間問題を片付け、振興に力を入れたい」と周囲に話していた仲井真知事。だが、辺野古に造る代替施設の滑走路の位置を沖合に移動する条件をめぐり、日米両政府と折り合いが付かないまま、09年自民党から民主党へ政権交代した。

 「最低でも県外」を掲げた民主党政権だったが最終的に辺野古案に回帰した。県民世論の高まりを受けて、仲井真知事は10年4月の県民大会に参加し「(県内移設は)差別に近い印象すら持つ」と言及し、知事選直前の9月の県議会で県外移設を正式表明した。

 再選後は、辺野古推進を目指す日米両政府と平行線をたどる一方、環境影響評価(アセスメント)手続きは完了し、ことし3月に埋め立て申請が出された。

 当初、代替施設完成目標は「14年」だったが、11年6月の日米合意で「できる限り早い時期」に変更。ことし4月の嘉手納より南の統合計画で「22年度またはその後」とされた。

 一方、普天間問題をめぐる紆余(うよ)曲折は県内世論を大きく変貌させた。「基地が今、沖縄にあることを追認せず、明確な根拠を政府に求めるようになった」(県幹部)。仲井真知事は昨年4月、県に地域安全政策課を発足させ、独自の情報収集に着手。米国やアジアの有識者らと連携を強め、東アジアの安全保障における沖縄の位置付けを大局的にとらえるようになった。(西江昭吾)

知事“交渉”で大幅増 脱リンク論で確保が焦点
予算規模

 仲井真弘多知事の任期中の政府からの沖縄振興予算を比較すると、1期目の2007~10年度分の予算は全国的な財政難の影響で減少傾向にあった。2期の1年目となる11年度分は過去10年で最低の約2301億円に落ち込んだが、5次振興計画にあたる新たな沖縄振興計画がスタートする12年度は当時の民主党政権が約2937億円と大幅増に編成した。

 自民党が政権に戻った13年度も3001億円とさらに増加し、2期目の最終年度となる14年度概算要求は那覇空港第2滑走路分が加わり約3407億円に跳ね上がった。

 民主政権時代に沖縄振興予算が上向き始めたのは、事務同士の調整が中心だった従来の予算協議が、知事自ら内閣府や関係省庁に要請を重ねるスタイルに重きが置かれた側面が大きい。

 政府は振興は基地政策とリンクしない、と繰り返すが、民主政権は普天間飛行場の県外移設から名護市辺野古に回帰して沖縄側との信頼関係に大きな溝ができたため、振興をより手厚くすることで信頼回復したい狙いがあった。

 県は、12年度から新たな沖縄振興に合わせ予算増や自由度の高い一括交付金の創設を求めて実現させた。当時、国の事務方からは「ほかの都道府県では考えられない予算増と制度。リンク論は否定しつつ、沖縄にすり寄りたい政権に働きかけた知事の政治力だ」と指摘した。

 自民政権も基地と振興のリンクは否定するものの、普天間の辺野古移設で知事の埋め立て承認申請への判断が迫る中で、振興面で沖縄側に配慮を示し、知事の理解を得ようとの姿勢が見え隠れする。

 2期目の最終年に入り、仲井真知事はリンク論によらず14年度概算要求通りの予算規模を確保できるかが焦点となる。(銘苅一哲)

少数与党 苦しい対応
議会対策

 仲井真弘多県政は県議会で、少数与党下の苦しい対応を強いられている。

 ただ、知事が2010年知事選で普天間飛行場の県外移設を公約し、埋め立て承認の判断時期が迫る現在も県外を堅持している。野党は知事の基地問題に関する姿勢を評価しており、最近の論戦では知事の答弁に拍手を送ることもしばしば。議会での対立は“小康状態”となっている。

 知事が就任後、初の県議選となった08年は、後期高齢者医療制度に対する有権者の反発を受け、与党は22議席にとどまる惨敗。野党・中立が26議席を得た。

 勢いに乗った野党は08年6月定例会で、名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議を賛成多数で可決。当時、辺野古移設を条件付きで容認していた知事は、すかさず決議に対する反論声明を発表し、対立が深まった。

 昨年3月には、県が識名トンネル工事の補助金不正受給に絡み、補助金の返還予算5億8千万円を提案したが、野党・中立は「原因究明が不十分な段階で、県民に負担を強いる予算に賛成できない」と該当額を削除した修正案を可決した。

 これに対し、知事は県政史上初めて、議会への拒否権に当たる「再議」を発動し、原案を可決。わずか3週間後に県立病院の定数条例をめぐり、知事は2度目の再議に踏みきり、対立は先鋭化した。12年の改選でも野党・中立が27議席を獲得し、与党少数の構図が続いている。(吉田央)

目標1千万人 高い壁
観光客
 

 仲井真知事は2006年の就任時に、10年後の16年の沖縄への観光客目標を1千万人に据えた。円安効果による国内旅行需要の拡大や航空路線網の拡充を背景に、2013年度の観光客数は誘客計画「ビジットおきなわ」で掲げる630万人に達する見込みだ。

 上半期だけで見ても外国客は前年同期比4割増の35万人、国内客も1割増の302万人と、国内外ともに過去最高だった昨年を上回る勢いで推移している。

 県は外国客をさらに増やそうと、11年の中国数次ビザの導入や、ASEAN、ヨーロッパでの集客活動など、海外需要の拡大を推進してきた。

 その一方で、08年のリーマンショックや12年の尖閣諸島領有権問題などの教訓から、外的要因に左右されにくい態勢をつくる観光危機管理システムも強化している。

 だが、肝心の観光業界では、業界全体の人材不足や集客争いの激化による客単価の下げ止まりが長年の課題となっている。

 目標の1千万人達成は困難視する見方が強いが、ハード、ソフト両面での政策強化を含め、リーディング産業を主導する県の積極的な取り組みが強く求められている。

(松田麗香)

一定改善 「質」に課題
失業率

 仲井真弘多知事が一丁目一番地の重点公約として、就任当初から掲げる「完全失業率の全国並み」。実現には至っていないが、総じて「雇用の量」の拡大を一定評価する声も多い。

 全国一のペースで増える県人口に応じて、就業者数も伸び続けている。ことし10月時点での年平均完全失業率は6%で、例年になく好調。有効求人倍率も9月から2カ月連続で本土復帰以降の過去最高値を更新し、仕事の数は増え続けている。

 一方で、非正規雇用率や離職率は好転の兆しがみられない。待遇や賃金の改善など「雇用の質」面での課題は山積したままだ。

 仲井真県政は今年初めて、雇用の量拡大を重視していた「グッジョブ運動」(2007年度~)の基本方針に雇用の質向上を盛り込んだ。関連事業を強化し、質の向上に向けて本腰を入れる構えだ。

 雇用の質の低さが、完全失業率の改善を阻んでいるとの指摘もある。仲井真県政2期目の総仕上げに向け、上向きの雇用情勢を一過性で終わらせず盤石にできるかが問われている。(篠原知恵)

「中位」公約は未達成
県民所得

 1人当たり県民所得について、仲井真知事は任期中に「全国中位」に引き上げることを公約に掲げたが、最新の2010年度は202万5千円で最下位、全国平均(272万9千円)の約7割の水準から抜け出せていない。

 沖縄の県民所得の低さの要因として、全国との産業構造の違いが指摘される。特に、雇用効果など地域経済に与える影響が大きい製造業の割合が沖縄は4%(10年度)で全国の約5分の1と低い。

 ただ、仲井真県政はこうしたハンディを認めながらも沖縄が持つ特異さを逆に好機と捉えて県経済をけん引する産業振興施策を効果的に打ち込んでいる。

 県が政策的経費の比重を高める「情報通信」「国際物流」関連事業は従来の「観光」と併せて、その可能性を秘める。これが3大産業に成長し軌道に乗れば沖縄発の地域活性化策として空洞化が進む他の地方の先進事例になる期待もある。

 現在査定が続く14年度の予算編成作業も県民所得の向上と無関係ではない。税収増につなげ盤石な県財政にする必要が一方ではあるからだ。

 12年度には使途の自由度の高い一括交付金が新設され、これら環境整備に向けた条件面は整った。その意味で仲井真県政にとって2期目の最終年は仕上げの一年となり、真価が問われる一年となる。(粟国祥輔)