生活保護の引き締め策を盛り込んだ改正生活保護法と、保護を受ける手前の人の生活を支援する生活困窮者自立支援法が6日の衆院本会議で可決、成立した。

 生活保護法は1950年の施行以来、初の大幅な見直しとなる。だが、申請手続きの厳格化や不正受給への罰則強化など申請へ萎縮効果をもたらしかねない改正である。

 当事者や支援団体などから懸念の声が上がる中、臨時国会では、特定秘密保護法をめぐる与野党の攻防の陰で、成立までに十分な議論が尽くされたとはいえない。

 生活保護を受ける申請手続きでは、申請する人に資産や収入を記した書類の提出を義務づけた。困窮者の中には路上生活者もいるかもしれない。そういう人たちにとって、あまりに高いハードルだと言わざるを得ない。また、書類の不備などを理由に、自治体の窓口で申請を門前払いする「水際作戦」を助長することにつながりかねない。

 日本弁護士連合会は「違法な『水際作戦』を合法化し、保護申請に対する一層の萎縮的効果を及ぼす重大な問題がある」として、早期見直しを求める会長声明を出した。

 昨年、人気タレントの母親が生活保護を受けていたことで、世間に「バッシング」の嵐が吹き荒れた。

 今回の改正のきっかけにもなった。しかし、不正受給は2011年度で、金額ベースでは全体の0・5%程度にすぎない。引き締め策によって、保護を必要としている人を排除する結果になっては本末転倒であり、見直すべきだ。

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 生活保護受給者は、8月時点で全国で約159万世帯、約216万人で過去最多となった。そのうち、65歳以上の高齢者世帯が全体の45%を占めている。

 改正生活保護法では、受給者の自立を促す支援策も設けている。「就労自立給付金」は、受給者が働いて得た収入を積み立て、保護から抜けたときに支給する。

 しかし、改正法が持つ全体のトーンは、不正受給を減らすことなど、締め付けである。扶養義務者に対する自治体の調査権限も強めており、家族に迷惑がかかる-と申請をためらう人が増える恐れもある。

 一方、生活保護に至る手前の人を支援する生活困窮者自立支援法は、生活に困る人から相談を受ける窓口を自治体に設置し、自立に向けた支援プランを作ることを義務づけた。離職し住まいを失った人への家賃補助も制度化した。

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 憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と国民の生存権を定めている。生活保護法はその理念に基づくものである。

 昨年1月、札幌市のマンションで40代の姉妹が遺体で見つかった。姉は生活保護申請のため窓口を3度訪れたが、受給には至っていなかった。専門家らは窓口対応が申請の壁になっていると指摘した。

 生存ぎりぎりの環境にいる弱者にとって生活保護は「最後のセーフティーネット」だ。その人たちを切り捨てる社会にしてはならない。