県内農家の植物工場への事業参入を促すため、沖縄セルラー電話(那覇市、北川洋社長)は先月下旬から、南城市玉城で植物工場の実証実験を始めている。植物工場は施設の建設コストや栽培に掛かる電気代などが高く、参入に課題があるため、採算性が取れる収益体制を構築できるか検証する。「採算モデル」が確立できれば県内農家らに栽培ノウハウと共に提供する。(仲田佳史)

沖縄セルラー電話が南城市に設置した植物工場(同社提供)

植物工場で栽培しているロメインレタスの苗(同社提供)

沖縄セルラー電話が南城市に設置した植物工場(同社提供) 植物工場で栽培しているロメインレタスの苗(同社提供)

 実証事業は、社内ベンチャー制度を使った人材育成の一環。事業を軌道に乗せるための市場調査や収益分析を通じて社員の成長を促すのが狙いで、ビジネス開発部に10月に新設された開発グループの社員が取り組んでいる。

 被災地の福島県のJAと共同で植物工場の運営を手掛けている「みらい」(東京都、嶋村茂治代表)と5月末に業務提携。施肥や温度管理などの施設維持にかかわる知識や技術提供を受ける。

 植物工場は建築面積約80平方メートルの地上1階鉄骨造り。先月29日に完成し、レタスやバジル、ベビーリーフを栽培している。日産400株を来年2月から本格出荷する予定だ。当面は社員食堂に利用するが、販路開拓を進めてホテルや飲食店向けに販売していく。生産体制を整えて「みらい畑ブランド」として、年間10万株を出荷する。

 農水省の2005年の「農林水産研究開発レポート」によると10アール当たりの生産コストの事例比較で、植物工場はビニールハウス栽培と比べて設置コストが17倍、光熱費は47倍かかる。露地栽培の野菜と比べて小売価格は2倍以上となるため、植物工場を運営する各事業所は栄養価や味わいの違いで差別化している。

 実証事業では、えぐ味がなく、栄養価の高い野菜を生産するための栽培管理データを蓄積し、高単価でも市場で流通できる野菜の品目を割り出す。生産コストの削減に向けて、電気料金の低い夜間電力の使用比率を高めて効率的に電力を使用する。最終的には建築面積330平方メートルの施設で採算が取れる経営モデルを構築し、県内農家に普及していく。

 植物工場は異業種からの参入がほとんど。建設には、農地法の規制で農地転用許可を受ける必要があり、農家の参入には課題もある。

 沖縄セルラー電話は生産の効率化と加工食品開発による収益向上、販売ルートの確保で、農家への普及につなげる考えだ。担当者は「あらゆる可能性を探って、農家に普及できるようにしていきたい」と話した。