異例ずくめの強引な国会運営で成立した特定秘密保護法が13日、公布される。法律には1年以内に施行することがうたわれているが、小手先の対応では国民の懸念をぬぐい去ることはできない。

 安倍晋三首相は9日の記者会見で世論の反発を意識し、「もっと丁寧に時間をとって説明すべきだった」と述べた。本心からそう思っているのであれば、今度こそ与野党で熟議を重ね、法律の廃止か全面的見直しに着手すべきである。

 共同通信社が8、9両日に実施した電話世論調査によると、特定秘密保護法を今後どうすればよいかとの問いに対し、「このまま施行」はわずか9・4%にとどまった。「修正」(54・1%)と「廃止」(28・2%)を含めると、実に82・3%が法律の見直しを求めている。法律への不安を「感じる」と答えた人も70・8%に達した。

 法案成立後に実施したマスコミ各社の世論調査は、おおむね似た傾向を示している。国会周辺を取り巻いた人びとの声が国民全体に広く共有されていることを裏付けるものだ。

 この事実は、成立した法律に対して国民が「ノー」を突きつけたのに等しい。

 国会での相次ぐ強行採決。アリバイづくりとしかいいようのない形骸化した地方公聴会。二転三転の政府側説明。バナナのたたき売りのように成立直前に次々に発表された、法律にない新たな組織。

 正当性を欠いた法律は廃止するか全面的に見直すしかない。

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 安倍首相は記者会見で「野党との法案修正がなされたことは大きな成果」だと強調した。ほんとにそうだったのか。修正で合意した日本維新の会もみんなの党も、参院本会議では議場から退席して棄権するか、反対票(みんなの党の3人)を投じた。

 決して採決で賛成したわけではないのだ。それがなぜ「大きな成果」だといえるのか。政府自民党の国会運営には、この種の我田引水の議論や取り繕いがあまりにも多かった。

 安倍首相は「秘密が際限なく広がることは断じてあり得ない」と述べた。「知る権利は奪われない」とも強調した。これらの説明には、それを担保する法律の条文がない。法律の中にチェック機能や検証機能が十分に備わっていればまだしも、それが明文化されていないのである。説得力に欠けるのはそのためだ。

 たとえ首相であっても「オレを信じてくれ」では担保にならない。それが特定秘密保護法の持つ怖さである。

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 安倍首相は「一般の方が巻き込まれることは決してない」と指摘した。この言い方にも落とし穴がある。「一般の方」とは誰をさすのか。

 憲法が保障する思想・表現の自由とは、何よりも、反対する自由、抗議する自由、政府の政策にノーを言う自由のことを言うのである。

 デモとテロを混同するような与党幹事長の下で、公安部門の特定秘密が増殖したらどういうことになるのか。その懸念はぬぐい切れない。