安倍晋三首相の父で外相などを歴任した晋太郎氏は「俺は岸信介の娘婿ではない。父親の安倍寛の血が流れている」とよく話していたという。以前に取材した自民党の元幹事長、野中広務氏から聞いた

▼首相の祖父、寛氏は1942年の翼賛選挙で非推薦で衆院議員に当選。軍部主導の政治を徹底的に批判した反骨の政治家だ。野中さんは「安倍さんは、寛さんの孫であるということを考えてもらいたい」と話していた

▼安倍首相は今年の漢字に「夢」を選んだ。理由を「今年9月に2020年の東京五輪開催が決まった。みんなで頑張れば夢はかなうと実感できたのではないか」と説明した

▼首相が夢に見る今後の日本とはどういう姿だろうか。国民の権利を侵害すると批判が強い特定秘密保護法など、祖父が抵抗した戦前の体制を取り戻そうとしているのではないか

▼女房役の菅義偉官房長官は「即」を選んだ。自民党の県関係国会議員らを「普天間飛行場の辺野古移設」容認で屈服させた強硬な姿勢などを考えるとうなずける

▼今年の世相を1字で表す「今年の漢字」は「輪」に決まった。東京五輪の決定が決め手だ。世紀の祭典に期待を寄せる気持ちは分かる。一方、華やかなニュースに隠れて、この国が一度歩んだ間違った道に踏み出していることを危惧する。(与那原良彦)