自由と人権を尊重する民主主義の国アメリカが全体主義へ姿を変えたのは、わずか12年前のことだ。

 2001年9月11日の米同時多発テロからわずか45日後。テロリズムを摘発するための「愛国者法」が成立した。

 米議会が、テロの定義やプライバシーの保護を十分に審議せずに成立したこの法律で、捜査当局は権限を拡大。テロに関連していると判断した市民の個人情報は、裁判所の命令なしで入手が可能になり、司法の手続きを経ずに外国人を拘束する自由をも手に入れた。

 恐怖心に支配された国民が自発的にお互いを監視し、ブッシュ政権や戦争を批判する市民への尋問や逮捕が、アメリカに住む私たちの日常で実際に起きていった。

 米国民が平常心を喪失している間に始まった戦争は、今もなお続くが、冷静を取り戻したアメリカは過去を反省し、ようやく検証を開始した。そんなころ、日本で秘密保護法が成立した。

 日を追うごとに高まる国民や学者やメディアの反対を無視し、会期内に成立させるために、参議院に2人しかいない野党の常任委員を解任するという常軌を逸した展開は、数を押さえたから何でもやりたい放題の安倍政権下では、日本の議会制民主主義は機能しないのだということを世界に露呈した。

 安倍政権がこれほどまで強引に成立を重視した秘密保護法は、隠したい軍事情報を「秘密」に指定すれば、それを論ずる者も罰することを可能にする。

 「民意を尊重する」という民主主義の基本を捨て、自分の意見を押し通すという暴挙に出た安倍政権は、憲法を変えなくても、実質的に改憲と同じ効力を持つ状況を整えようとしている。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を容認した自民党の5議員は、秘密保護法にも賛成票を投じた。

 米国との軍事一体化を進め、沖縄を「軍事の島」にするための矢はすでに放たれているのである。茫然(ぼうぜん)自失している暇はない。(平安名純代・米国特約記者)