「貧困を背負って生きる子どもたち 仁の物語」はユーチューブで10万回以上再生されている動画である。貧困対策に取り組む京都のNPO法人「山科醍醐こどものひろば」が実話を下敷きに制作した

 ▼母子家庭で育つ中学3年の仁。心の病を患う母親に代わって家事をこなし、弟の面倒をみる。学校へは行かないのではなく「行ってる場合じゃない」。そんな少年に世間は「福祉からお金もらっていいね」と容赦ない言葉を浴びせる

 ▼動画は仁が新たな道を切り開くまでを描く。生活保護世帯への批判的な声が高まる中、その日常がリアルに語られることは少ない。見ようとしなければ見えない現実だ

 ▼必要最低限の生活を保つための収入がない絶対的貧困率が県民の3割近くに上り全国ワーストとなっている。働いても貧困から抜け出せないワーキングプア率も2割を超え全国一高い

 ▼かなりショッキングな数字である。にもかかわらず深刻さが共有されていない。沖縄は貧富の差を示すジニ係数の高い県である。貧困者が見えにくい層が社会の中心にいて、問題の切実さに寄り添えないからではないか

 ▼貧困のもとをたどれば、沖縄戦の荒廃と米軍統治下での制度格差に行き着く。国の振興策も公共事業に偏ったものだった。もうこれ以上放置はできない。(森田美奈子)