小さな鬼の子どもが、大粒の涙を流し、泣いている。「ボクのお父さんは、桃太郎というやつに殺されました」。かわいい子鬼とのギャップに思わず目がとまった。タイトルは「めでたし、めでたし?」

▼新聞協会の2013年度新聞広告コンテストの最優秀賞作品だ。一方的な結末を生まないため「広げよう、あなたがみている世界」と呼びかける

▼ある事象も、立場によってそれぞれの考え方、捉え方を生む。違う意見を自由に表現しそれに耳を傾けるのは民主主義の基本だ。鬼退治のヒーローの陰で、父を思い泣く子鬼の姿に気づけるかは大切だ

▼全体が一つの方向に突き進めば、小さな涙や意見は蚊帳の外に追われ、見捨てられる。大きな力が小さな声を押しつぶせば、圧政、恐怖政治につながる

▼この1カ月、政府、自民党は党の県関係国会議員や党県連を翻意させ、特定秘密保護法を強行成立させた。抗議活動を「テロ」と呼び、報道規制につながる発言も出た。いざとなれば民意など簡単につぶすぞ、と言わんばかりだ

▼みんな大満足の「めでたし、めでたし」は難しくとも、力を持つ者こそ小さな声をすくい上げる努力が必要だ。地上戦を経験し、土地や家族を奪われ基地に苦しむ島の話に、耳を傾けてくれるのはだれなのだろう。(儀間多美子)