「県外移設」の文言がなく、口頭での県外要請もなかった。一体、どういうことなのか。これは単なる要請書ではなく、辺野古移設の受け入れ条件を網羅した文章ではないか。そうとしか受け取れないような内容だ。

 安倍晋三首相をはじめ全閣僚、仲井真弘多知事らが出席する沖縄政策協議会(主宰・菅義偉官房長官)が17日、首相官邸で開かれた。

 3月に開かれた政策協で仲井真知事は米軍普天間飛行場の県外移設を要請した。だが今回は、県外移設に言及せず、代わりに「普天間飛行場の5年以内運用停止、早期返還」という表現を盛り込んだ。オスプレイについても配備中止という従来の表現を使っていない。

 「オスプレイ12機程度を県外の拠点に配備」し、「訓練の過半を県外に移転」することや、「普天間飛行場運用停止後、県外移設」することなど、意味不明の体言止めの文言が並ぶ。「日米地位協定の条項の追加等、改定」との文言も分かりづらい。メモ風に急いでまとめ、推敲(すいこう)もせずに提出したような言葉遣いだ。

 唐突な開催といい不自然な内容といい、一体、何があったのか。誰が入れ知恵したのか。

 要請書は政策転換した自民党県連や官邸と水面下で調整したことをうかがわせる内容だ。

 これが受け入れ条件でないとすれば、一体、何なのか。知事は要請の趣旨と内容を早急に、自らの言葉で丁寧に県民に説明すべきだ。

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 要請の中身が受け入れ条件なのかとの記者団の質問に対し、知事は「直接は関係していない」と答えているが、本当にそうなのか。

 16日に上京した知事は沖縄振興予算が閣議決定される来週まで、ずっと東京に滞在する予定だという。腰痛が悪化したため東京で入院加療するということらしい。時期が時期だけにこれも疑念を生じさせる行動だ。

 入院中であっても体調が許す限り、県民への説明責任を果たすべきである。今回の要請はあまりにも唐突だ。

 県議会での答弁や記者会見での説明、公的な場での発言は、県民が知事の考えを知る数少ない機会である。

 政府と知事の水面下での話し合いが、「公式見解」とはまったく異なる方向に進んでいるとすれば、知事は言葉を使い分け、県民を欺いたことになる。

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 県の中でも、環境保全を重視する環境生活部と違って、公有水面埋め立てを所管する土木建築部は、手続きが適切だったかどうか、という形式面を重視しがちだ。だが、今回は米軍飛行場建設という極めて特殊な案件である。

 現行法に不備があるのは、オスプレイ配備という重要情報を後出ししたことや、名護市民・県民の声を完全に無視して埋め立て申請したことからも明らかだ。通常の公共事業では考えられないことである。

 そうである以上、手続きに不備があるかどうかだけを判断材料にすべきではない。