これが「強い国」を実現させる道なのだろうか。お互いに「強い国」を目指す隣同士の2国が、相手に対する不信感と警戒心を募らせ、軍事面だけを突出させたら、どういう結果を招くのか。

 沖縄の人たちは、中国の海洋進出に対して強い懸念を抱きながらも、それが「日中冷戦」という形で固定化し、この地域の緊張が高まるのを何よりも恐れている。

 安倍政権が打ち出した「外交・安全保障政策の3点セット」は、そのような不安を抱かせる内容だ。

 政府は17日、外交・安全保障の指針となる「国家安全保障戦略」を閣議決定した。あわせて、今後10年程度の防衛力整備のあり方を定めた「防衛計画の大綱」(新防衛大綱)と、5年間の具体的な整備計画を盛り込んだ「中期防衛力整備計画」(中期防)を決めた。

 国家安保戦略は国際協調主義に基づく「積極的平和主義」を基本理念として掲げている。ただし、この「積極的平和主義」は、憲法9条を前提にした従来の平和主義とは似て非なるもの。海外での軍事行動も辞さないという軍事面での積極的貢献を可能とする内容である。

 武器輸出三原則の基準を緩和した。敵基地攻撃能力についても今後、保有を検討することになった。来年には集団的自衛権の行使容認に踏み込む構えである。矢継ぎ早の転換だ。これらの「3点セット」によって日本は、これまで歩んできた平和国家の道とはまったく異なる方向に、大きくかじを切ることになる。

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 「3点セット」の最大の特徴は、中国に対する警戒心を前面に打ち出したこと、防衛力整備の軸足を南西諸島に移し、離島防衛を主眼にしていることである。

 復帰前の冷戦期、沖縄は「太平洋の要石」といわれた。東西冷戦が終結しても沖縄に平和の配当はなく、復帰後も負担軽減は遅々として進まなかった。

 そして今度は、「日中冷戦」をにらんだ日米共通の軍事拠点として位置づけられてしまった。

 新防衛大綱や中期防の中身を見ると、南西諸島における自衛隊の増強計画がめじろ押しである。目まいがするほどだ。

 沖縄を舞台にした日米の軍事一体化は、負担軽減の動きとは完全に逆行しており、沖縄にとって、疑いもなく「新たな基地受難」の始まりになるだろう。

 日中衝突による沖縄の「戦場化」を根拠のない不安と見てはならない。

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 国家安全保障戦略の中には「我が国と郷土を愛する心を養う」との表現で、愛国心を育てることが盛り込まれた。

個人の心の領域に属する愛国心を上から国民に押しつけるのは「開かれた自由な社会」を息苦しくする。強制は逆効果だ。

 国家安全保障戦略には、信頼醸成や対話、文化交流など、権力政治を抑制するような外交努力の重要性が正当に位置づけられていない。東アジアの安定した地域秩序をどうつくっていくか。肝心な点があいまいだ。