これが「切り札」なのか。そう思うと、何とも心もとない。仲井真弘多知事が沖縄政策協議会で提出した要請書はふに落ちないことだらけだ。

 要請書は、1「予算確保」2「基地負担の軽減」3「次のステップへ」と項目分けしている。が、要請項目を箇条書きで羅列した文面では甚だ物足りない。

 最大の焦点である普天間飛行場に関しては「5年以内の運用停止、早期返還」「オスプレイ12機程度を県外の拠点に配備」とある。なぜ5年以内、12機程度なのか。

 「12機程度を県外の拠点に配備」の項目には、「訓練の過半を県外に移転」が細目として付されている。

 政府は、陸上自衛隊へのオスプレイ配備を、今後5年間で進める「中期防衛力整備計画」に盛り込んだ。この動きと県の要望は連動するのか。

 細目には、「普天間飛行場の運用停止後、県外移設」ともある。が、知事が名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請に同意するのであれば、論理矛盾としかいいようがない。

 政府は普天間の早期返還に向け「知事から辺野古移設加速のお墨付きを得た」と都合よく解釈するのではないか。

 全ては知事の腹にかかっており、県民への説明は何もない。これまで知事に政策を委ねてきたのは県民世論を踏まえ、「県外移設」の公約に沿った判断をする、という前提があるからだ。

 公約の破棄や変更でないというのであれば、知事は入院中とはいえ、副知事が代わってでも県民への説明を優先するのが筋ではないか。

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 要請内容は、政府がまともに向き合えばハードルはかなり高いといえる。が、口約束のレベルでお茶を濁すのであれば、ハードルは決して高くはない。

 安倍晋三首相は知事の要望に対し、「最大限努力する」と回答した。が、これでは何の保証も得られていないに等しい。仮に閣議決定しても、日本政府のみの判断で実効性の担保が十分に得られたとは受け止められない。

 知事は政府からの基地負担軽減策の具体的な回答を待って埋め立て申請の諾否を下す意向で、回答がない場合、年末にも想定される判断の先送りも検討している、という。

 とはいえ、政府が米側と交渉し、実効性のある担保を得るには明らかに時間不足だ。県の埋め立て申請の審査は最終段階を迎えており、政治的な判断で引き延ばす覚悟が、知事にどれだけあるのかも不明だ。

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 「基地の負担軽減は目に見えた形で進んでいない」。沖縄政策協議会の後、仲井真知事は記者団にこう語った。

 「目に見える形の基地負担軽減」は、稲嶺恵一前知事の県政時代から政府に繰り返し要望してきたフレーズだ。

 県民にいまだにその実感が湧かないのは、基地負担軽減の核心が普天間飛行場の閉鎖であり、米海兵隊の移転、撤退だからだ。

 知事が埋め立て申請に同意すれば、その後は、県が行政として辺野古移設に歯止めをかけるカードはないことを強調しておきたい。