全閣僚と県知事で構成する「沖縄政策協議会」という公式の場で、仲井真弘多知事が安倍晋三首相に直接、要請書を手渡してから1週間がたつのに、県サイドから県民に対しいまだに何の説明もない。

 要請書から選挙公約の肝だった米軍普天間飛行場の「県外移設」の文言が消え、その代わり普天間の「5年以内運用停止」が盛り込まれた。知事の真意は何なのか。

 要請書の「予算確保」の項目には、那覇空港滑走路増設がある。「次のステップへ(沖縄のさらなる発展に向けて)」の項目では、鉄軌道の導入決定・早期着工、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」の候補地域として検討するよう求めている。いわゆる「カジノ法案」である。自民党などが衆院に提出し、来年の通常国会での成立を目指している。

 要請内容には既視感がある。仲井真知事が初当選したのは2006年12月。当時は条件付きで辺野古移設を容認するスタンスだった。

 事務方トップの防衛次官を長く務め、普天間問題に当初から深く関わった守屋武昌氏の著書によると、07年早々、仲井真知事が受け入れの条件として、那覇空港の滑走路新設、モノレールの北部地域までの延伸、高規格道路、カジノを挙げたことが記述されている。県経済界の重鎮が仲井真知事の使者として、当時の県選出国会議員を介して伝えてきたことを明かしている。今回の要請書とほぼ符合する内容である。

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 政府、自民党本部は11月、「県外移設」を選挙公約に掲げた県関係の党国会議員5人と、党県連を力ずくで辺野古移設容認に転換させた。圧力に屈した県連はその後、政府と党本部に五つの基地負担軽減策を要請している。

 「普天間の5年以内の運用停止状態」「24機のオスプレイの半数を県外に分散配備」「牧港補給地区(キャンプ・キンザー)、那覇港湾施設(那覇軍港)の早期返還」「日米地位協定の改定(環境条項追加)」などが主な内容である。県連の要請は、知事の要請書とほぼ重なっている。

 辺野古移設の姿勢を鮮明にし活発に活動している県経済界の中心人物は、辺野古移設をめぐって経済界の「意思統一」を図ろうとしたが、異論が相次ぎまとめることができなかった。知事の要請書は経済振興で経済界の中心人物ら、基地負担の軽減で自民党県連の要望を取り入れて作成したとみていい内容である。

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 国が県に提出した辺野古沿岸部の埋め立て申請は事務審査がほぼ終了した。川上好久副知事、當銘健一郎土木建築部長らが23日、都内の病院に検査入院している知事に報告した。事務段階では環境保全に関し適否を示しておらず、土建部は詰めの作業を急ぐ。

 要請書は県庁内のごく限られた者しか関与させずに作成している。公約との整合性は保たれているのか。手続きに正当性はあるのか。事前に官邸とすり合わせており、疑念が膨らむ。知事は可否判断の前に、県民に対する説明責任を果たさなければならない。