いくつもの幸運が重なったとはいえ、わずか7歳の少年である。明かりのない部屋で空腹や寒さ、暗闇に耐え、水道水だけで、絶望的状況を生き抜いた精神力と生命力には驚くばかりだ。

 北海道七飯町の林道で行方不明になっていた小学2年の田野岡大和君が一昨日、6日ぶりに保護された。

 行方不明になったのは、5月28日午後5時ごろ。公園で人や車に石を投げつけたため、両親がしつけの意味を込め、自宅に帰る途中の林道で車から降ろし、置き去りにした。約5分後、父親が現場に戻った時、姿はなかった。

 保護されたのは、行方が分からなくなった場所から歩いて10キロの距離にある隣町の陸上自衛隊演習場だった。28日の夜から、演習場内の宿泊施設にいたという。

 テレビに映し出される現場周辺は、子どもの背丈を超える草木が生い茂る森である。大人でも3時間はかかる獣道を日没後、どのように歩き、施設へとたどりついたのか。

 男の子は「水を飲んで過ごした。備え付けのマットレスで寝ていた」と話している。

 たまたま施設の鍵が開いていて、マットレスで暖を取ることができ、外には水分を補給する水道があったという偶然が重なり命をつなぐことができた。

 発見場所は、北海道警や消防、自衛隊ら延べ千人を投入した捜索で対象外の地域だった。

 子どもの心理や体力から、険しい山道に入る演習場は除外したためだが、今後、捜索の課題として検証する必要がある。

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 このニュースは海外でも大きく報じられた。「しつけ」として山中に置き去りにした行為への議論からである。

 同じ年頃の子を持つ全国の親たちは、ニュースを通して、しつけはどうあるべきか、という問いに向き合うことになった。 

 男児が保護された後、取材に応じた父親は「行きすぎた行動で息子に大変つらい思いをさせた」と後悔の念を口にした。

 たった5分とはいえ、子どもの動きは予想が難しく、夕方の時間帯に、山中に置き去りにするのは、確かに行きすぎだ。ただ、つい強く子どもをしかって家から閉め出すなど、似たような経験を持つ人は少なくない。

 今回、父親を「責める気にならない」とする声が多かったのは、頭では分かっていても、子どもを冷静にしかる難しさを痛感してのことだろう。

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 発見直後、自衛官から渡されたおにぎりをほおばる大和君の写真がニュースで流れた。極度の緊張状態から解放されホッとしたような表情に胸が締め付けられる。泣きだしたり、取り乱したりすることのない対応には、精神力の強さを感じる。

 しかし彼はまだ7歳の少年だ。一人取り残され、山中をさまよい、幾晩も暗闇の中で過ごした恐怖は、計り知れない。

 親子の新たな関係を丁寧に築いていくと同時に、心のケアをお願いしたい。