仲井真弘多知事は、まるで別人のようだった。菅義偉官房長官が作ったシナリオの上で踊らされているパペット(操り人形)のようにもみえた。

 25日、首相官邸で仲井真知事が安倍晋三首相と向かい合っていたころ、那覇市の県庁前では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する住民が雨に打たれ、傘を差して、悲壮感に満ちた表情で知事の埋め立て不承認を訴えた。

 だが、住民の必死の叫びは首相官邸に届かなかった。いや届かなかったのではない。知事は17日の沖縄政策協議会以来、東京に閉じこもり、県民の声を聞こうとしなかったのだ。

 会談で安倍首相は2014年度の政府予算案に概算要求を上回る3460億円の沖縄振興予算を計上したことや、2021年度まで毎年度3千億円台の沖縄振興予算を確保する方針を明らかにした。

 知事は「いろいろと驚くべき立派な内容をご提示いただいた」と最大級の言葉でお礼を述べた。記者団に対しては「有史以来の予算」と、政府の回答を絶賛する発言を繰り返し、「いい正月になる」とまで語った。

 会談後、知事は車に乗り込んだ後、窓から笑顔で「ハブ・ア・ナイス・バケーション」と言いながら記者団に手を振った。

 石破茂自民党幹事長が、県関係国会議員5人を従えて記者会見したときもそうだったが、それをはるかに上回るおぞましい光景だった。

 知事は、辺野古を金で売り渡すつもりなのだろうか。

 来年度増額される那覇空港第2滑走路の増設事業予算は、航空自衛隊那覇基地へのF15戦闘機1個飛行隊の追加配備を前提にしたもので、県の要望に応じたというだけの話ではない。

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の関連予算についても、オールジャパンの立場で建設した大学であり、本来沖縄振興予算とは別枠で、国が措置すべきものである。

 知事は「有史以来の予算」というが、今回を上回る沖縄振興予算が計上されたこともある。

 政策協で沖縄側が求めた基地負担の軽減策について、首相は日米地位協定を補足する新たな政府間協定を作成し、環境条項を盛り込む考えを示した。

 だが、普天間飛行場の5年以内の運用停止については、「危険性除去が極めて重要な課題だという認識を知事と共有している」と述べただけで、具体的には何も答えていない。

 首相の回答は、文書ではなく、すべて口頭だった。現時点では何も決められず、文書にすると政府が縛られるからだろう。これまでも閣議決定や総理大臣談話でさえほごにされているというのに、実現の担保がない「口約束」というしかない。

 首相と知事の会談は、ほぼすべて記者団に公開した。このやりとりを国民に見せ、普天間移設問題をめぐって、政府と沖縄が共同歩調を取り始めていることをアピールしようとした「政治ショー」そのものである。

 会談自体よりも、会談以外のところでどのような裏約束があったのかが問題だ。知事は17日の政策協以来、首相との間でどういうやりとりがあったのかなど、県民に一切説明していない。

 仲井真知事が、ほかでもない140万沖縄県民を代表する知事ならば、包み隠さずに語らなければならない。