「沖縄県知事が年内の埋め立て承認を約束したそうだ」-。ある米有力議員から、そう聞かされたのは11月末。米上下両院軍事委員会の幹部らが、2014会計年度の国防権限法案の一本化作業に着手したころだった。

 在沖米海兵隊のグアム移転予算の計上を認めた下院軍事委員会に対し、レビン上院軍事委員長らは同予算の削除と凍結の継続を主張。14年度も予算が凍結されれば、グアム移転計画は頓挫し、国防費削減で在沖米海兵隊員数が削減される可能性も浮上していた。沖縄に駐留する海兵隊の数そのものが減れば、名護市辺野古の代替施設の必要性も揺らぐことになる。

 そのころ、仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場の固定化回避のために辺野古容認を迫る政府に対し、「固定化という発想、言葉が出てくるのは一種の堕落だ」と厳しい批判を展開していた。

 しかし、米政府関係者らへの取材を進めると、知事と政府側が「県内移設」を念頭においた協議を重ねているといった情報が集まり始めた。

 「普天間は年内に決着したい。沖縄の自衛隊配備増強も必要だ」と説く菅義偉官房長官の言葉に知事は深くうなずき、カジノ誘致や沖縄振興を語り合う-。こうした米側での情報は、一貫して「県外」を訴えていた知事の姿からかけ離れたものであり、まるで現実味のないものだった。

 しかし、25日の安倍晋三首相との会談で、「驚くべき立派な内容」「さすがに安倍晋三首相、菅義偉官房長官!」「これはいい正月になるなあ」などと高揚した表情で喜びを表現する知事の姿は、米側が語る「もう1人の知事」の姿にぴたりと重なった。

 ヘーゲル国防長官が27日に発表した承認を歓迎する声明は、実はこの会談が開かれる前に用意されたものだった。

 仲井真知事の埋め立て承認は、本人がいくら説明を重ねようが、明白な「県内移設容認」であり、「県外」を望む県民の声とは相反するものだ。

 しかし、知事は安倍首相らとの会談で「140万人の県民を代表して心から感謝」などと伝え、まるで沖縄と政府が相互理解したかのような印象すら与えてしまった。

 こうした知事の埋め立て承認を米側が「県民の意向を反映したもの」と受け止める可能性はないだろうか。気になる。(米国特約記者・平安名純代)