仲井真弘多知事の名護市辺野古の埋め立て承認は、全国のさまざまなメディアで報道された。内容は、県民の視点を共有しているかどうかで大きな違いを見せた。県内では「金で転んだ沖縄」と誤ったイメージが広がり、沖縄問題が共有されないことに警戒感がある。首相官邸公式ページには「揺すりタカリ」と沖縄批判が続々書き込まれた。メディア論の専門家からは、金と基地に単純化した報道の在り方に疑問も出た。

お互いに文書を読み上げ深々と礼をする安倍首相と仲井真知事=25日、首相官邸

 25日に首相官邸での安倍晋三首相との会談。首相からの沖縄振興策や基地負担の「軽減策」の説明に、仲井真知事は「驚くべき立派な内容」「140万県民を代表して心から感謝」と称賛し、その後も記者団に「これはいい正月になるな」と上機嫌だった。この映像、フレーズが何度もテレビで放映された。

 同志社大学社会学部の渡辺武達教授(メディア論)は「その部分を繰り返し報道することで、基地と金の問題に単純化した。『沖縄の人は最後は金だ』と分かりやすく説明したようなもの」とみる。

 県外の人にとって「沖縄問題は触れない方が暮らしやすいし、後ろめたい気持ちからお金でケアしてあげたらいいという考えが基本にある」と分析。その上、金にまつわる報道があると「贖罪(しょくざい)意識を小さくして、金でなんとかなるという認識を上塗りする。沖縄の問題が日本全体の問題として考えられなくなっている」と、沖縄報道の在り方を疑問視した。

 一方、知事が承認を表明した27日、県庁ロビーを埋めた市民約700人が、知事のいる公舎に押し掛けなかった理由には、メディア対策があった。

 現場を仕切った、沖縄平和運動センターの山城博治議長は「沖縄全体がカネで屈服したと報道される危機感があった。公舎に人数を分散せず、県庁を埋めた県民の怒り、映像を本土メディアを通じて発信したかった」と語る。

 在京紙では東京新聞が県庁での抗議活動を1面トップにすえた。ただ、反対行動を特定グループと紹介する新聞もあり、新聞によって報道内容の隔たりは大きかった。

 専修大学の山田健太教授(言論法)は、紙面の違いについて「日米同盟や安倍政権への距離の違いに基づく」としながら「根底には沖縄の住民の人権や日々の生活より、米国に寄り添うことが『国益』に資すると考えていることは明らか」と話す。

 その上で「以前に比べ沖縄の視点での報道も出るようになっている。だが、本土メディアが沖縄と本土の溝を埋めるのではなく、広げる報道になっていることは残念だ」と述べた。