江戸時代、恋人に会いたい一心で放火事件を起こし死罪になったとされる「八百屋お七」の物語は、歌舞伎や浄瑠璃でたびたび演じられる人気の作品である

 ▼丙午(ひのえうま)の女性は気が強く縁遠いといったたわいない迷信は、その年に生まれた八百屋お七の話から広がったそうだ

 ▼一番近い丙午の年は1966年で、子どもの数ががたんと落ち込んだ。午(うま)年生まれの年男、年女が合わせて958万人と十二支の中で最も少ないのも、丙午が影響している

 ▼なるほど、日本の人口ピラミッドには大きなへこみが二つある。一つは終戦前後の極端な減少、そしてもう一つが丙午の年。第2次ベビーブームに向かうさなか、前年を25%も割り込んだ出生数は、積み木を抜き取ったような不自然な形をしている

 ▼少子化がクローズアップされるきっかけは、合計特殊出生率が1・57と過去最低となった89年の「1・57ショック」である。出産を控えるという特殊な事情があった66年の1・58を下回ったことに、国は大いに動揺したのだった

 ▼その後も出生率は下がり、現在は1・41。迷信よりも、子どもを産み育てにくい現実社会の方がはるかに深刻だ。若者の就職支援、教育費の負担、男性の育児参加…。今、手だてを講じなければ、人口ピラミッドの付け根はますます細くなる。(森田美奈子)