安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、円安や株価上昇を呼び込み、景気回復への一定の道筋を付けた。一方、つましく暮らしている多くの庶民にとって、その恩恵を実感できないまま、試練の年が幕を開けた。

 今年4月、消費税率は8%に引き上げられる。1997年4月に3%から5%に引き上げられて以来、17年ぶりとなる引き上げだ。

 増税による景気の腰折れ懸念は拭えない。国民生活への影響をいかに最小限に抑え、速やかに回復軌道に戻せるか、安倍政権は、より困難なかじ取り役を求められている。

 政府が昨年12月に決めた2014年度税制改正大綱は、交際費の非課税制度の拡充など企業に対する優遇措置ばかりが際立つ。対照的に、家計向け支援は薄く、不安が募る。

 食料品など生活必需品の税率を低くして低所得者の負担感を和らげる「軽減税率」については、導入の方針は盛り込まれたものの、重要部分の結論は先送りされた。対象品目や税率、明確な導入時期はあいまいなままだ。消費税は低所得者層ほど負担が大きい。その痛みを和らげるための対策を急ぐべきだ。

 「庶民の足」として広く利用されている軽自動車にかかる税も引き上げられる。15年度以降に新車を買った場合、軽自動車税が現行の1・5倍となる。沖縄を含め、公共交通の整備が脆弱(ぜいじゃく)な地方の生活者への影響は大きい。

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 政府が企業の優遇措置に力を入れるのは、企業が活力を取り戻し賃上げや雇用が上向き、消費や投資に向かう経済の好循環を図る狙いがある。ただ、企業の収益が増加しても、思惑通り賃上げに振り向けられるかは不透明だ。

 厚生労働省の毎月勤労統計調査で、基本給などの所定内給与は減少傾向にようやく歯止めがかかった程度だ。

 共同通信社が主要104社を対象にしたアンケートでも、14年度の従業員の賃金を前年度比で「上げる」と回答したのは全体の17%にとどまった。しかも賃金全体を底上げするベースアップを明言した企業はゼロだった。

 政労使がデフレ脱却に向けて協調し、企業収益の拡大を賃金上昇につなげていくとの合意文書も交わされた。しかし、厳しい状況が続く中小企業まで浸透するかは見通せない。

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 雇用環境の不安定な非正規労働者の総数は12年度、初めて2千万人を超えた。雇用者全体に占める割合は、沖縄が44・5%と全国で最も高い。

 必要最低限の生活を保つための収入がない人の割合を示す「絶対的貧困率」と、就業世帯のうち所得水準が最低生活費以下の世帯(貧困就業世帯)を示すワーキングプア率も、沖縄は全国ワーストだった。過酷な状況下で暮らす人々の多さを示す。

 賃上げや雇用の改善効果が波及しなければ、消費税増税による負担感のみが重くのしかかる。経済的弱者への配慮が足りず、格差の固定・拡大につながりかねない。