ミュージシャンの大滝詠一さんが昨年末、65歳で急逝した(1日付社会面)。新譜を30年近く待ち続けたファンとして残念でならない

 ▼1980年代に作詞家・松本隆さんとコンビで松田聖子「風立ちぬ」、薬師丸ひろ子「探偵物語」、森進一「冬のリビエラ」などのヒット曲を連発した。「夢で逢(あ)えたら」は今も多くの歌手に歌い継がれる

 ▼流麗なメロディーの作風で知られる一方、コミックソングの名手でもあった。ビートルズの曲を大胆に改変した「イエローサブマリン音頭」は出色だ。金沢明子のこぶしの効いた熱唱、アナーキーな魅力は今も色あせない

 ▼惜しくも解散した県出身ロックバンド、オストアンデルは大滝さんのギャグが満載された「ハンドクラッピング・ルンバ」の歌詞「あんころ饅頭(まんじゅう) 押すと餡(あん)出る」から命名したという。硬軟自在の数々の名曲を残し、若手からも敬愛された

 ▼中学生のころ自分の小遣いで初めて買ったレコードが大滝さんの作品だった。「雨のウエンズデイ」や「スピーチバルーン」を聞き返すと、夏休みの自転車旅行での風景や匂い、感情がよみがえる

 ▼アルバムの最終曲は「さらばシベリア鉄道」。バンド仲間でもあった共作者の松本さんはツイッターでその歌詞を用い、「十二月の旅人よ」と哀悼した。友情が胸に迫る。(田嶋正雄)