安倍政権は戦後教育の大転換となる政策を矢継ぎ早に打ち出している。教科書検定基準の見直し、道徳の教科化などである。国家統制が色濃く、個人の思想・信条に踏み込む危うさが消えない。

 第1次安倍政権は2006年に教育基本法を約60年ぶりに改め、「愛国心」を盛り込んだ。カムバックした第2次安倍政権では昨年12月、初めて策定した外交と安全保障政策の包括的な指針である「国家安全保障戦略」に「愛国心」を組み入れた。

 教育と外交・安保政策が愛国心というキーワードでつながった。「国を守る教育」を志向しているとみるほかない。

 先の大戦で本土の「捨て石」にされた沖縄からは、きな臭さが感じられてならない。

 愛国心は国が上から強制するものではないはずだ。国による愛国心教育が偏狭なナショナリズムに陥ったのは、先の大戦に至った経緯をみれば明らかだ。戦後教育は、その反省の上に立っている。

 安倍晋三首相は昨年4月、教科書検定基準について「愛国心、郷土愛を書いた改正教育基本法の精神が生かされていない」と答弁。下村博文文科相も見直しに言及した。

 これを受け、文科省の教科書検定審議会は昨年12月、同省が示した改革案をあっさり了承した。戦後の検定制度を転換する改革である。「検定基準を政権交代によって変えるのは異常だ」と真っ当な批判をする委員もいたが、たった2回の会合で終了した。

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 検定改革案は(1)通説的な見解がない歴史的記述はバランスを取り、政府見解や確定判決を盛り込む(2)教育基本法の目標に照らして重大な欠陥があれば不合格にする-などである。「自虐史観」などと主張する自民党の教科書批判勢力の意向を取り入れた改革案である。南京大虐殺や日本軍「慰安婦」などを念頭に置いているとみられる。

 第1次安倍政権の07年3月、高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」について「誤解するおそれのある表現である」との意見が付き、「軍の強制」が削除された。その後、大規模な県民大会などによって軍「関与」を示す記述は復活したが、軍「強制」は認められていない。検定意見は撤回されていないのである。

 政府見解の記述を求めるのは、事実上の「国定教科書」への回帰である。「教育基本法の目標に照らして重大な欠陥」とは何を指すのか。執筆者や教科書会社の萎縮効果を狙ったものにしか思えない。

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 県内では八重山地区の中学校公民教科書採択をめぐり、石垣市、与那国町が育鵬社版、竹富町が東京書籍版と、異なる教科書を使用していることに対し、文科省は竹富町に直接、是正要求を迫る考えを変えていない。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設をなりふり構わず強行しようとする国の姿勢と二重写しになって見える。

 政治が教育に介入し、国家主義がせり出してくるのは、教育を支える地域社会全体を息苦しいものにする。