政治家にとって最も大切なものは何か。ある政治家は「徳」だと言った。徳とは「まっとう」ということである。ごく普通の人に分かりやすい言葉で、政策や真意を説明し、納得させることだ。

 ところが、仲井真弘多知事は昨年末に米軍普天間飛行場移設に向けた辺野古埋め立てを承認して以来、その対応は、まっとうさとはほど遠く、県民との溝は深まる一方だ。

 仕事始めの6日、記者団の「いい正月を迎えられたか」という質問に「いい正月だった。サンオイルを塗って日光浴をしたぐらい、いい天気の日があった」などと語る姿勢には、県民に十分な説明責任を果たしていないという認識は感じられない。

 そういう知事の言動に対しお膝元から強い抗議の意思が示された。

 那覇市議会は6日、臨時議会を開き、辺野古の埋め立てを承認した知事に抗議し、辺野古移設断念と基地負担軽減を求める意見書を賛成多数で可決した。欠席の1議員を除く38人中、賛成33人、反対5人だった。

 同市議会の構成は議長を除き、与党が自民系15人、公明7人を含む25人。野党11人、中立3人。翁長雄志市長を支える与党議員を含め、多数が辺野古移設反対の意思を示した意味は大きい。

 意見書では、知事が安倍晋三首相との会談で「140万県民を代表して感謝する」と発言したことに対し「県民の思いと大きくかけ離れたもの」と批判した。多くの県民が同じ思いだろう。知事は一体、誰を代表したというのか。

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 意見書はさらに「埋め立て承認は(全41市町村長と議会議長らが署名し、県外移設を求めた)建白書に反する」「知事のこれまでの公約や県議会答弁と矛盾している」とし、あらためて県民へ説明することを求めた。

 知事は、埋め立て承認表明会見や年明けの会見で、公約との整合性などを問われると、「開き直り」ともとれる強い調子で反論を繰り返しているが、その説明に納得する有権者はいるだろうか。

 私たちは昨年12月28日付の社説で、知事に辞職してあらためて県民に信を問え-と主張した。知事は任期を全うすると言うが「言葉のまやかし」に終始する姿勢では、信頼を失っていくばかりだ。

 知事は名護市長選で移設推進候補の応援に意欲を見せている。右手に「辺野古移設推進」、左手に「県外移設」という二つの旗を掲げて応援するというのだろうか。

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 昨年6月23日、沖縄全戦没者追悼式の平和宣言で知事は「普天間飛行場の県外移設、日米地位協定の抜本的見直しを求める」と誓った。知事は2011年から宣言に県外移設を盛り込んでいる。み霊の前で交わした約束は重い。知事はことし、どのような宣言を行うつもりなのだろう。

 辺野古の海が埋め立てられ普天間が移設されると半永久的に巨大な基地が維持される。知事は9日の県議会臨時会で、埋め立て承認に関する考え方を説明する。県民誰もが分かる「まっとう」な言葉で語らなければならない。