任期満了に伴う名護市長選が12日告示され、19日投開票される。いずれも無所属で、再選を目指す現職の稲嶺進氏(68)=社民、共産、社大、生活推薦=と、新人の前自民県議末松文信氏(65)=自民推薦=による一騎打ちとなることが確実である。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で、稲嶺氏は断固反対、末松氏は積極的推進と立場の違いが鮮明だ。

 辺野古移設問題を正面に押し出して争う市長選は初めてである。1998年以来、過去4回の選挙では、移設容認派が推す候補が選挙戦術として争点化を避けてきた。

 当初、「保留」としていた末松氏は、仲井真弘多知事が埋め立て申請を承認したことで「積極的推進」を明言した。対立軸が分かりやすくなったことは歓迎したい。

 初当選以来「辺野古の海にも陸にも新しい基地は造らせない」ことを公約に掲げ、基地に頼らないまちづくりを目指す稲嶺氏。辺野古移設を積極的に推進することによってもたらされる再編交付金などをてこに経済振興を図ろうとする末松氏。両氏はそれぞれが描く地域の将来像を有権者に語ってもらいたい。

 今回に限っては、もう一つの大きな争点がある。仲井真知事による辺野古埋め立て承認の是非である。

 本来であれば、知事は当事者中の当事者である名護市への説明を何よりも真っ先にしなければならなかったはずである。だが、埋め立て承認の表明当初は市民への言及さえなかった。名護市への説明は承認前も、後も一切ない。市は一貫して蚊帳の外に置かれていたのである。

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 移設区域は県の「自然環境の保全に関する指針」で、「自然環境の厳正な保護を図る」最も重要なランク1に位置付けられている。

 環境影響評価(アセスメント)の手続きの中で、稲嶺氏は、辺野古移設に断固反対する「市長意見」を知事に提出している。市長意見は、市議会の議決を経ており、市民意思の表明である。

 市長意見ではオスプレイ配備の懸念、生活環境や自然環境への影響など公有水面埋立法の要件を満たしていないことや、政府が「不都合な真実」を隠すなど環境影響評価の基本理念を無視して手続きを進めてきたことなど事業の不適切性を逐一批判した。

 市長意見で引用しているように「知事意見」でも「生活環境および自然環境の保全を図ることは不可能」と断じ、最終段階に至っても県環境生活部は「懸念が払拭(ふっしょく)できない」としていた。市長意見が全く考慮されず、一転して「適合」となったのはなぜなのか。

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 移設に推進か反対かにかかわらず、生活の安心・安全、自然環境の保全は、市民の大きな関心事である。

 知事は選挙応援に積極的な姿勢を示しているが、名護市に入りやらなければならないことは市民に向き合い、説明責任を果たすことである。「県外移設」の公約と辺野古埋め立て承認の整合性についても説明が要る。知事の論理に説得力があるかどうかを判断するのは、名護市民である。