昨年末、師走の街の慌ただしさから逃れるように国頭村の森を歩いた

▼イタジイの古木が茂る照葉樹林。こんもりとしたブロッコリーのような樹冠部が北風をさえぎり、森の中は寒い冬の日でも暖かい

▼当日は雨。快適な山歩きには向かない天候だが、やんばるの湿潤な環境を保つ自然の恵みだと思えば、雨音さえも心地よい。ふと野鳥研究者の金城道男さんから聞いた話を思い出した

▼地球儀を沖縄本島の位置から横になぞると、同緯度の陸地に森林がほとんどないことに気付く。大インド砂漠、アラビア半島、サハラ砂漠、バハカリフォルニア半島…。北緯30度付近では、一般的に降雨量を蒸散量が上回るため砂漠や乾燥地帯が圧倒的に多いという

▼やんばるの亜熱帯降雨林は周囲の海からの湿った空気がつくる雲や霧、台風による雨などの条件が重なり形成された。大陸から切り離された環境で独自の進化を遂げた数々の固有種が息づく。金城さんは「北緯26度の奇跡の森」と表現した。世界自然遺産にできるだけ広い範囲が登録され、保全されることを望む

▼山歩きの途中、オキナワウラジロガシの巨木を見上げた。深い森の中で静かに時代の移り変わりを見守ってきた風格がにじむ。人間が自然を守るのではなく、人間が自然に守られている-。そう強く感じた。(田嶋正雄)