医学用語の一つに、NOT DOING WELL(ノット・ドゥイング・ウェル)という言葉があります。「何となく元気がない」「何となくおかしい」「いつもと違って変だ」などという解釈で使われます。的確な訳語はありませんが、この言葉は乳幼児の病気を見つけるのに非常に有用でしばしば使われます。

 子どもの病気は症状が多岐にわたっていて、症状と病気が一致するとは限りません。高熱であれば何らかの感染があるだろうと推定できますが、乳幼児では熱がない病気も結構あります。37~38度くらいの微熱で、元気でミルクもよく飲む、機嫌もいいという場合は重い病気であることは少ないものです。むしろ熱はないのに不機嫌でミルクもあまり飲まないとか、元気がなくぐったりしているというような時に重病が隠されていることが多々あります。

 それではどういうことに気をつけたらいいでしょう。日頃からわが子の状態をよく観察して、いつもと違って何か変だということに気づくことです。ミルクや食事の量、うんちの状態、おしっこの出具合などチェックしながら、表情や顔色、泣き声、体の動きなどを観察することです。

 例えば、こういう例があります。3カ月の乳児ですが、時々機嫌が悪く激しく泣いている。でもしばらくするとまた機嫌はよくなりニコニコしている。オムツを取り換えても、うんちやおしっこには変化が認められない。ミルクもいつもと同じように飲んでいるということで、少しあやしながら様子をみていたら、ミルクを吐き、うんちに血が混じるようになり慌てて病院(救急)を受診しました。そこでいろいろな検査をして「腸重積」という急を要する病気だということがわかりました。この病気は症状がそろっていれば診断は比較的簡単ですが、症状がばらばらにでることも多く、最初は診断がつかないこともあります。それでも、その子がいつもと違って「何か変だ」とか「いつもと違う」ということに早く気が付くと対処も早くでき、状態も軽いときに見つけることができます。

 子どもはそれぞれ個性があり、発育や発達にも多少は差異が認められます。したがって他の子と比較する必要はありませんが、わが子の日頃の状態を把握することは重要であり、いつもと違って何か変だとか、何となくおかしいということに気づくことが大事です。そして、その情報を大事に聞き取っていくことが我々医師の役目でもあります。(宮城裕之・沖縄赤十字病院)