少年は爆弾が破裂する瞬間、家族のことを思ったのだろうか。それとも命を懸けて守った友人たちの笑顔だったのか

▼パキスタンで自爆テロから学校を救った少年への称賛が広がる。そこには2千人近くの生徒がいた。CNNは(タリバンを批判して銃撃された)マララさんよりも称賛に値するという地元住民の声を紹介した

▼中学生のころ宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」の朗読を聞いた。ブドリは町を冷害から救おうと一人きり島に残って火山を噴火させる

▼無私の行動に共感が広がる教室で、恩師が発した諭すような言葉が耳に残っている。「人のため尽くすのはいいこと。でも一人だけを犠牲にしなくても、みんなが協力し合えば、世の中をよくしていける」

▼パキスタンの少年は英雄となった。その死は、続く人が出てくることを求める風潮を強めないだろうか。どうにもやりきれない。自らの命と家族や友人の命を秤(はかり)に掛けることを、子どもに強いるこの世界は悲しすぎる

▼かの地では、子どもの自爆テロが起きる。彼らは「英雄になれ」と言い含められて、身をささげたのかもしれない。あちこちの国で子どもが爆弾を身にまとい、銃を手に取る。少年の死を悼むのなら、テロリズムや内戦が起こる病巣を探り当て、根絶へ導くことに知恵を絞りたい。(具志堅学)