知事の埋め立て承認が大きな転換点であることは間違いないが、山を越えたと考えるのは間違いだ。新たな困難の始まりだと見るべきである。 環境保全措置が不十分であるにもかかわらず、仲井真弘多知事が名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認したのは、公有水面埋立法が定める基準に適合せず違法である-米軍普天間飛行場の移設問題で辺野古の住民ら194人が処分取り消しを求める行政訴訟を那覇地裁に起こした。

 併せて住民らは、判決が確定するまで、承認処分を執行停止するよう申し立てた。

 辺野古移設をめぐっては、環境影響評価(アセスメント)手続きのやり直しを求める「アセス訴訟」が現在、控訴審で争われている。これにさらに「埋め立て承認取消訴訟」が加わったことになるが、自然保護団体や住民らは、米国防総省を相手に米国で提訴することも検討している。

 この種の行政訴訟でまず問題になるのは、「原告適格」である。行政事件訴訟法上の利害関係者として認められなければ、訴えは不適法とみなされ、却下判決を受ける。

 住民は埋め立て承認という行政処分によって、静かな環境を破壊され、平和的生存権を脅かされる恐れがあり、影響の大きさから言っても原告となる資格がある、と見るべきだ。

 実体審理に入った場合の最大の争点は、公有水面埋立法第4条に合致しているかどうか、である。この問題を解き明かすためには仲井真知事の証言が欠かせない。知事の法廷出席を求めるべきだ。

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 埋立法第4条は、承認の条件として(1)国土利用上、適切かつ合理的であるかどうか(2)環境保全、災害防止に十分配慮しているかどうか、などを掲げている。

 仲井真知事はアセス評価書に対する知事意見の中で「生活環境および自然環境の保全を図ることは不可能」だと指摘した。補正評価書で補正されたものの、環境保全措置としては不十分な内容で、埋め立て承認願書に対する県環境生活部の意見も極めて厳しいものであった。

 環境生活部の意見は18項目48件に上る。米軍の環境保全措置に実効性の担保がないこと、現状では基地から派生する環境問題に日本側が対応できないこと、ウミガメ、ジュゴン、サンゴ、海草藻類に与える影響が懸念されること、などを具体的に挙げ、「懸念が払拭(ふっしょく)できない」と結論づけた。

 たびたび懸念を指摘していたにもかかわらず、突然、承認基準に「適合」していると判断したのはなぜなのか。

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 知事は沖縄振興予算を「有史以来の予算」だと持ち上げ、安倍晋三首相に対して最大の賛辞を送った。だが、沖縄振興予算に配慮したことと、公有水面埋立法に基づく承認不承認とは何の関係もない。

 不承認処分を下す理由があったにもかかわらず、承認の行政処分を下した-多くの県民はそう疑っている。

 承認に至る経過は透明性を著しく欠いており、事後の説明も不十分だ。訴訟は真相究明の格好の機会でもある。