日用品や食料品を買おうにも地元の商店やスーパーは消えてしまい、車もない-。ここ数年、お年寄りを中心とした「買い物難民」が社会問題になっている

▼農林水産省の推計では、最寄りの生鮮食品店まで500メートル以上で車も持っていない人は全国に910万人。沖縄は6万人と人口比では低いが、高齢化や小売店の廃業は人ごとではない

▼こうした「難民」を出すまいと、北谷町栄口区は新たな取り組みを始めた。「えぐち商店」と銘打って毎週金曜日に公民館の敷地を開放し、業者や個人が米や豆腐、野菜、牛乳などを持ち寄る。いわば小さな移動商店街

▼初開催となった先週は大勢の区民でにぎわい、売り切れが相次いだ。お年寄りたちが世間話に花を咲かせる光景からは、宅配やネット注文では補えない地域の温かみがにじむ。町内では、ほかの二つの自治会も後に続く予定だ

▼一緒に企画を進めてきた町福祉課によると、隣の区に大きなスーパーがある栄口区で買い物が不便とは想定外だったという。ところが「坂道が大変」「荷物を持っていると遠すぎる」などの声が多いことが分かった

▼買い物難民は、何も過疎地に限らない。都市部で、住宅街で、人知れず増えている。車社会の沖縄では見えにくい問題だからこそ、高齢化社会に向けて目を凝らしたい。(鈴木実)