浦添市勢理客にある国立劇場おきなわが18日、開場10周年を迎えた。「小さく産んで大きく育てる」という言葉の通りに、国立劇場は2004年1月18日、さまざまな課題を抱えてスタートし、一歩一歩、着実に実績を積み上げてきた。

 この10年の最大の成果は、組踊の若手後継者が着実に育ち、舞台に活気を与えているだけでなく、新たなファン層を開拓し始めていること、全席数に対する入場率や大劇場、小劇場の稼働率が好調に推移し、関係者の間に「やっていける」という自信が芽生えたこと、である。

 04年度から12年度までの9年間に、国立劇場おきなわの自主公演に足を運んだ観客は約13万3千人。全席数に対する入場率は04年度の57・7%から12年度には70・3%に上昇した。

 同劇場は伝統組踊保存会の協力を得て3年間の組踊研修を実施している。きらりと光る舞台映えのする若手が次々に登場しているのは、頼もしい限りだ。県立芸大が果たしている役割も見逃せない。

 若手後継者を養成し、技芸のレベルを高め、良質な舞台を提供することで入場率や稼働率を高めてきたのである。

この好循環を、さらに次の高みに押し上げてほしい。

 現状に安住したり向上心を失って自足すれば、技芸は停滞し、魅力を失う。舞台に立つ者が年齢に関係なく向上心を保ちチャレンジ精神を発揮し続けるためには、技芸に専念できる環境を整えることと、外部の確かな批評の存在が欠かせない。

    ■    ■

 芸術監督として国立劇場運営の重責を担うのは、34歳の嘉数道彦さんである。前任の演出家幸喜良秀さんによる抜擢(ばってき)人事だ。

 これからは、若手の台頭を若いファン層の開拓につなげる新たな仕掛けが必要になるが、嘉数さんが新風を吹き込むことを期待したい。

 企画力を高めること、観光施設や学校、企業との連携を深め集客力を高めることも、今後の大きな課題である。

 企画力が大切なことを痛感させたのは、昨年3月に上演された新作組踊「聞得大君誕生」と、世界的な免疫学者として知られた故多田富雄さんの新作能「沖縄残月記」(11年7月上演)。

 「聞得大君誕生」は歌舞伎女形の人間国宝坂東玉三郎さんが出演したことで、かつてない反響を呼んだ。国立劇場だからできた企画である。

 沖縄戦の悲劇を描いた外部持ち込み企画の「沖縄残月記」は、能と琉球芸能を融合したもので、沖縄で演じてこそ意味のある作品だった。

    ■    ■

 若手実演家の台頭には二つの側面がある。舞台が華やぎ、活気が出てきたことは喜ばしい効果だ。しかし、芸の重厚さを若手に求めるのは難しい。言葉の壁もある。この問題をどのように克服していくか。

 時代が変われば舞台も変わる。変化は避けられない。しかしそれでもなお、失ってはならないものがある。それは何か。

 関係者に課せられた課題は多い。