米軍普天間飛行場の移設問題は、相反する二つの事実がぶつかり、絡み合い、憂慮すべき様相を呈し始めている。

 二つの事実とは、昨年12月27日、仲井真弘多知事が名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認したことと、19日の名護市長選で辺野古移設反対の公約を掲げた現職の稲嶺進氏が大差で当選したことを指す。

 埋め立て承認という仲井真知事の行政処分に対して、これ以上ない形で明確に「ノー」を突きつけたのが市長選だった。

 埋め立て承認にあたって知事は、地元名護市や県議会に対する事前説明を行っていない。事後説明も全く不十分だった。官邸と密室協議を重ねた揚げ句、独断と批判されても仕方がないようなやり方で承認してしまったのだ。

 だが、安倍政権は、知事承認を錦の御旗に、過去のどの政権と比べても強硬である。

 選挙から一夜明けた20日、政府と名護市の対立の構図が早くも鮮明になった。

 政府は、3月に予定されている海底ボーリング調査や滑走路の設計業務に関する入札を早ければ21日にも公告する予定であることが明らかになった。選挙結果に関係なく、作業を「粛々と進める」という国家意思を示し、住民の反対の声を萎えさせる狙いがあるのだろう。あまりにも露骨で、あからさまである。

 自由民主主義(リベラル・デモクラシー)を標榜する社会で新たな軍事基地を建設する場合の最低限の条件は「地元の同意」である。安倍晋三首相は、最低限の条件さえ踏みにじるつもりなのか。

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 稲嶺市長は当選後、「埋め立てが前提である協議ならば、すべてお断りする」「政府から協力を求められても応じない」と断言した。

 作業ヤードを設置するための漁港の使用許可や、市有地での土砂採取、飛行場施設への燃料タンクの設置許可など、市長が許認可権限をもつ作業については一切認めない方針を明らかにしたのである。辺野古反対の選挙公約を掲げ、それが支持されたのだから、稲嶺市長が抵抗の姿勢を示すのは当然だ。

 それよりも問題は仲井真知事の態度である。当落が判明した後のコメントを聞いてもどこか投げやりで、県民を代表する知事としての当事者意識が感じられない。

 選挙に負けた悔しさをにじませるだけで、今後に予想される混乱回避のための方策を真剣に検討する誠実な姿勢が少しも見られないのだ。

 承認すればあとは国の仕事で自分とは関係ない、と思っているのだろうか。昨年12月の沖縄政策協議会出席以降、知事の態度はほんとに変だ。    ■    ■

 埋め立て承認に至る経過を県庁内部で再検証し、県議会で結果を公表すべきである。 公有水面埋立法に適合するとの判断に違法性があれば、埋め立て処分を取り消すことも法的には可能だ。

 それもせず、高見の見物を決め込んで、政府と住民の対立の激化を放置するのであれば、もはや知事は県民を代表しているとはいえない。

 事態の深刻さを認識すべきである。