「言葉は島の宝」。旧伊良部町仲地出身で浦添市在住の富浜(とみはま)定吉(さだよし)さん(84)が、宮古地方の言葉では初の本格的辞典「宮古伊良部方言辞典」(沖縄タイムス社)を出版した。見出し語は1万7300超、島の屋号を盛り込むなど充実した資料編を含め1124ページの大著を、24年かけて完成させた。富浜さんは「それぞれの島の言葉を守り、多様性があることが大事。これを下敷きにして、各地の方言辞典ができれば大変うれしい」と話している。

24年かけてまとめた「宮古伊良部方言辞典」を手にする富浜定吉さん=浦添市内の自宅

 中学・高校で長く教職にあった富浜さん。島の子どもたちの中から地元の言葉が消えていくことに危機感を抱き、定年した1990年から辞典編さんを始めた。「島の人たちは方言でものを考え生きてきた。それを失うのは文化や島を失うようなものだ」

 大著に取り組んだ情熱の背景には、鉄血勤皇隊として動員された沖縄戦の経験もある。「お前はなぜ生きているのか、(捕虜になる前に)自決せよと言われたではないかと、死んだ学友に言われている気がする。怠けていていいのか、生きているのだから人に役立つことをやれと。心の底には常にその思いがある」

 見出し語を集めるため、筆記具を持ち歩き、寝る時も枕元に置き、浮かんだ言葉をすぐメモする生活を約20年続けた。仮名で表記できない発音をどう表すか、標準語の索引でどう分類するかなどの整理にも数年費やした。実際に使うときに役立つよう、日常会話を中心にことわざを交えた豊富な例文を掲載し、資料編では活用形を丹念に書いた。

 「昔のようには話されていない中で、方言を残していくためには辞典がなくてはならない。ほかの地域で辞典をつくる参考になれば」と広がりに期待した。