安倍晋三首相は、24日召集された通常国会で施政方針演説を行い、名護市長選で示された民意を一顧だにしない強硬姿勢をあらためて示した。

 首相は、米軍普天間飛行場の返還問題について「名護市辺野古沖の埋め立て申請が承認されたことを受け、速やかな返還に向けて取り組む」と述べた。

 仲井真弘多知事の埋め立て承認を「錦の御旗」に、辺野古移設を強行すると宣言したものだ。辺野古移設反対を公約に掲げた稲嶺進市長が大差で再選されたことは、一切考慮しないというに等しい。

 選挙という民主主義の手続きで示された名護市民の多数意思を完全に無視するやり方は、どの政権に比べても強硬だ。「1強」のおごりであり、民主主義を否定するものと言わざるを得ない。

 稲嶺市長は、移設強行が「地方自治を侵害する」として、市長権限を駆使して埋め立て工事を阻止する構えを示している。これに対し安倍政権は「市長権限は限定的」と、あくまで推進する考えだ。

 首相は演説で「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら取り組んでいく」と述べたが、欺瞞(ぎまん)である。菅義偉官房長官は「市長選の結果にかかわらず移設を粛々と進める」と述べた。選挙からわずか2日後に埋め立て関連工事の設計などの受注業者を募る入札を公告したことは、住民を愚弄(ぐろう)するものだ。

 仲井真知事の埋め立て承認も、決定過程が不透明で、その正当性に疑問がある。知事はいまだに十分な説明責任を果たしていない。

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 首相は演説で今国会を「好循環実現国会」と掲げたものの軍事偏重の「安倍カラー」をにじませている。自衛隊の海外展開を念頭に置いた「積極的平和主義」を強調。第2次政権での国会演説としては初めて「集団的自衛権」という言葉を盛り込み、行使容認に向けた憲法解釈の変更に取り組む考えを示した。

 集団的自衛権については「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告を踏まえ、対応を検討していく」と述べるにとどめたが、政権は同懇談会から4月に報告を受けた後、今国会中に憲法解釈の変更に踏み切ることを検討している。

 憲法の平和主義を揺るがしかねないものであり、国会での徹底した議論を求めたい。連立与党の公明党は、集団的自衛権の行使容認に慎重だが、政権のブレーキ役を果たさなければ「平和の党」の根幹に関わってくるだろう。

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 中国に対しては防空識別圏設定や海洋進出などを挙げてけん制し、南西地域の防衛力強化を強調するなど警戒心を前面に打ち出している。

 一方で「私の対話のドアは常にオープンである」と、首脳会談を呼びかけるとともに「戦略的互恵関係の原点に立ち戻るよう求める」と、関係改善への努力を表明している。ところが首相は昨年末、靖国神社を参拝し、中国や韓国の反発を招いた。言行不一致としかいいようがない。

 1強の「暴走」を止めることは言論の府、国会の役割である。