昨年暮れに発覚した冷凍食品への農薬混入事件で、製造工場に勤務する契約社員の男(49)が、偽計業務妨害の容疑で逮捕された。

 直接の逮捕容疑は、昨年10月3~7日ごろ、工場内で4回、ピザとコロッケなど計4商品に農薬マラチオンを混入し、業務を妨害した疑い。

 これまでに全国で健康被害が疑われているのは2800人以上に上る。食品への信頼を著しく失墜させた企業の管理責任と危機管理のあり方が、厳しく問われなければならない。

 農薬が検出されたピザやコロッケなどの冷凍食品は、マルハニチロホールディングスの子会社アクリフーズの群馬工場で生産された。

 容疑者は、2005年から8年余り勤務し、ピザの製造ラインを担当していた。工場内で容疑者が使っていた物から農薬が検出されたほか、混入された製品の製造日と勤務日時が一致したという。容疑は否認しているという。

 群馬工場の製造ラインは5種類で、ラインごとに部屋は分かれているが、立ち入りを制限する施錠などはなく、従業員は各部屋を自由に出入りすることができた。容疑者は、休憩時間に担当外の製造ラインに出入りする姿がたびたび目撃されている。

 同工場は業界団体から「厳格な品質管理体制を確立していた」と評価されていたというが、安全管理に対する認識は甘かったというほかない。製造過程で農薬が混入されたとすれば、どこに問題があったのか、徹底した検証が必要なことは言うまでもない。

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 会社側の対応が後手に回ったことが、商品回収の遅れにつながり、健康被害を拡大させた側面もある。その責任はきわめて大きい。

 冷凍食品を購入した客から「石油のような臭いがする」と苦情が寄せられたのは昨年11月中旬だった。

 同12月27日に一部商品からマラチオン検出の検査結果が出たが、会社側が公表したのは、2日後の同29日だった。苦情があってから約1カ月半たっていた。

 当初、毒性について「子どもが一度に60個食べないと健康に影響はない」としていたが、その後「8分の1個食べただけで下痢や嘔吐(おうと)などの健康被害が出る恐れがある」と訂正するなど、過小評価したことも食品メーカーとしての企業倫理が問われる。

 消費者の健康にかかわる疑念があれば、速やかに情報公開し、ただちに原因を究明すべきだった。

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 07~08年の中国製ギョーザ中毒事件を受け、業界団体では組織の管理、運営体制をより重視するよう基準を改定するなど、安全管理への努力を重ねている。

 その中で起きた今回の事件は、食品業界全体の課題でもある。あらためて安全管理体制をチェックする必要があろう。

 容疑者は同僚らに待遇面の不満を漏らしていたという証言もある。会社側には労働環境も含め、幅広いリスク管理が求められる。信頼回復に向けて一刻も早い全容解明と再発防止の徹底が急務である。