あまりにせっかちすぎるのではないか。議会側と向き合い、説得や調整を続ける努力を放棄して、いきなり辞職を表明して出直し市長選に持ち込む。こんな強引なやり方に、どれだけの市民が納得するのだろうか。

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が辞職して、出直し市長選に自ら立候補すると正式に表明した。

 橋下氏が掲げる「大阪都構想」をめぐり、市を廃止して新設する特別区の区割り4案から1案に絞り込むことに、自民、民主、公明、共産が反対したためだ。制度設計を担う法定協議会は大阪府と大阪市の議員らで構成され、大阪都構想そのものが否定されたわけではない。

 橋下氏は、感情が切れたように激しい言葉で他党の攻撃を繰り広げた。一足飛びに辞職し、市長選に踏み切る手法には多くの疑問が噴き出る。

 橋下氏の手法は、2005年、当時の小泉純一郎首相による「郵政解散」を思い出させるが、橋下氏は議員の議席をかけるわけではない。

 橋下氏が再選されたとしても、大阪維新の会は府・市議会において「少数与党」のままであり、協議会メンバーの構成が変わるわけでもない。橋下氏は再選を果たし、その民意をバックに特別区の区割りの絞り込み作業を推進したい考えだが、選挙戦を通じて議会側との関係がもっとこじれる可能性が否定できない。

 議会側の対応次第によっては、再度の出直し市長選を示唆している。橋下氏は、構想が壁にぶち当たるたびに選挙を繰り返すつもりなのか。

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 市民を代表する行政の長が首長であり、行政をチェックするのが議員である。いずれも市民によって選ばれており、民意の反映である。橋下氏は二元代表制をどのように考えているのだろうか。

 自らの意向が通らないと、二元代表制を否定するかのような極端な行動と言動に走ることに危うさを感じる。

 行政改革が市の重要課題といいながら、選挙にかかる費用は約6億円ともいわれる。

 選挙が想定されるのは3月。タイミングとしては最も悪い時期と言わざるを得ない。年度末のこの時期は14年度の予算編成の真っ最中である。予算編成は9割方出来上がっていたが、市長が代わることを想定して備えなければならない。人件費や生活保護費など必要最低限の経費を盛り込む骨格予算に編成し直す必要に迫られている。

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 二重行政の解消を目指す大阪都構想は大阪の形を大きく変革する。来年4月の移行を前提とし、秋ごろに住民投票のスケジュールを描く。区割りの絞り込みはその前段だ。

 だが、なぜ結論をそんなに急ぐのだろうか。民主主義は手続きに時間がかかる。そのためには意見を異にする人を粘り強く説得するとともに、相手の意見に耳を傾ける姿勢が欠かせない。その過程にこそ民主主義の本質があるというべきではないだろうか。

 仮に橋下氏が再選され、特別区の区割り絞り込みに従うべきだとの高圧的論理を展開するなら二元代表制の原則からいってとても通用しない。