これが沖縄選出議員の発言なのか。沖縄の民意を代表する立場を自ら放棄したと指摘せざるを得ない。

 島尻安伊子参院議員(自民)の参院予算委員会での質問である。

 島尻氏は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について「(稲嶺進名護市長が)市長権限で阻止すると主張している。主張は自由だが、これではただ混乱が続くだけ。行政事務は法令に従って行うべきだ。行政権限の乱用は地方自治上問題だ」と述べ、移設阻止を訴える稲嶺市長の対応を批判した。沖縄の民意を踏みにじった、看過できない発言だ。

 辺野古移設の是非が最大の焦点となった名護市長選で、稲嶺氏は移設反対を訴え、国の露骨なまでの圧力をはね返して再選を果たした。名護市民は「ノー」の意思を、明確に示したのだ。

 稲嶺市長は、埋め立てに関し、市長が許認可権限を持つ作業について一切認めない構えをみせている。具体的には、作業ヤードを設置するための漁港の使用許可や、市有地での土砂採取、飛行場施設への燃料タンクの設置許可などを指している。

 辺野古移設反対を掲げて当選した以上、公約実現のために抵抗の姿勢を示すのは当然である。島尻氏の発言を受けて、稲嶺市長は「市民の生命財産を守る責任の上で市長権限を行使するのであって乱用ではない」と反発した。その通りである。ひとたび新基地建設を認めれば、環境や人権などの面で市民生活が脅かされるのは明らかだからだ。

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 島尻氏は参院予算委で、稲嶺市長を批判するとともに、「(埋め立て工事に向け)違法な妨害活動を阻止するため、県警や海上保安庁が先んじて対策を取るべきだ」とも述べた。2004年に国が辺野古沖のボーリング調査に着手した際の反対行動に触れての発言だ。

 「先んじて」という表現が、反対運動を事前に押さえ込むことを意味するのであれば、市民運動の弾圧につながる危険な考えだ。

 そもそも当時、ボーリング調査をめぐって国側と反対派が衝突を繰り返し、けが人まで出たのは、見直しを求める環境団体や反対する市民らを押し切り、強引に調査に踏み切ったことに起因する。

 今回、国は市長選からわずか2日後に関連工事に向けた手続きに着手し、地元の頭越しに辺野古移設へと突き進んでいる。今、問われるべきは、県民を愚弄(ぐろう)する、このような国の姿勢ではないか。

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 名護市議会は3日、辺野古移設を強引に推し進める政府に対して激しく抗議し、普天間飛行場の県内移設断念と早期閉鎖・撤去を求める意見書を賛成多数で可決した。

 本来なら、こうした地元の意思を中央に伝え、理解を広げることこそ島尻氏に課せられた役割だ。

 島尻氏は、10年の参院選で「県外移設」を公約としながら、有権者への十分な説明もなく辺野古移設に転じた。民意に背を向け、公約をたやすく翻す政治家に、稲嶺市長を批判する資格はない。