ユネスコがまとめた「消滅危機の言語」で、国内ではアイヌ語に次いで深刻な「重大な危機」と指摘される与那国言葉(どぅなんむぬい)。島では人口減少が進む一方、島外から移り住む人の割合も増え、日常的に与那国語を話す人も減り続けている。町教育委員会は、与那国言葉の継承を進めようと昨年、「与那国方言伝承推進委員会」を立ち上げ、教本やカルタ製作など子どもから大人まで島言葉の浸透を図る取り組みを始めている。(八重山支局・新崎哲史)

与那国語の教訓を記したカルタ案を前に継承の取り組みを語る崎原教育長=与那国町教育委員会

 「うんてぃーかんだーんが うやぴーんきーんかい ぬびーんがしや うぶかでぃーぬ まいむてぃ(さつまいものかずらが上向きに伸びたら、大風の前触れ)」

 推進委員会が製作に取り組む「どぅなんむぬいカルタ」には島に伝わる知恵や教訓の言葉が並ぶ。

 子どもに限らず親世代も島言葉に親しんでもらおうと、与那国言葉のラジオ体操や読み聞かせ、方言講座など伝承を進める企画を検討している。

 島民の危機感は、ユネスコの指摘の前からあった。終戦直後、1万人を超えた人口は減り続け、現在は1551人。島の自然にひかれ移り住む者も多いが、その子どもたちは島言葉に触れる機会が少ない。

 町教委は昨年5月、20代以上の818人にアンケートを実施。「島言葉を理解し、話すことができる」と答えたのは48・5%(397人)にとどまり、「理解できるが話せない」は25・8%、「理解も話すこともできない」は25・7%だった。

 同教委の崎原用能教育長は「両親とも与那国生まれで日常的に島言葉を使う家庭は1割程度。勉強として教えても身につかないので、子どもや親世帯が日ごろから島言葉に触れる環境づくりが必要」と指摘する。

 与那国言葉は鼻にかけた発声や、のどを狭めて出す無気音など独特の音声がある。崎原教育長は「大きくなっての習得は難しく、幼児期に何げなく耳に残るようにしたい。だーくたがらや びでぃしーがら あがみーや あがみてぃーがら(家を建てる時は土台づくりが大事。子どもを育てるなら、幼い時のしつけが大事)」と力を込める。

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 教育現場でも取り組みは始まっている。与那国中学校では2009年から総合学習の選択科目に与那国言葉を取り入れる。

 島のお年寄りが講師となり、発声や例文を学び、最後は文化祭で島言葉の劇や伝統狂言「マスタティ」を披露する。

 2年連続で島言葉を選択した古見謙太郎君(2年)は両親とも島出身。「今まで聞けたけど話せなかった。劇で覚えた朝起きた後のあいさつを家でも使ったりしている。どんどん話して島言葉を残していきたい」と決意を込めている。