2014年春闘が始まった。前哨戦を仕掛けたのは政権側である。安倍晋三首相自ら経済団体の会合で賃上げを要請した。昨年末の政労使会議では、賃上げの必要性を盛り込んだ合意文書を政権主導でまとめた。異例の展開だ。

 「一時金も望ましいが、それよりベースアップ(ベア)が望ましい」。そう発言したのは菅義偉官房長官である。10年からベア要求を見送ってきた連合は、追い風に乗って「月給の1%以上のベア」を求めている。

 経団連は6年ぶりにベア容認の姿勢を示しているが、ベアではなく一時金(賞与)増額を検討している企業も多い。

 4月から消費税が5%から8%に上がる。物価が上昇するのは確実である。この局面で賃上げを実現しなければ、家計は深刻な打撃を受けることになる。「デフレから脱却し、経済の好循環をつくり出す」ためにも、労使それぞれが賃上げに全力を尽くしてほしい。

 その際、賃上げと並行して重点的に取り組んでもらいたいのは、非正規労働者の待遇改善である。

 総務省の13年平均の労働力調査によると、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託などの非正規労働者は1906万人、雇用者全体に占める割合は36・6%に達する。過去最高の水準だ。

 非正規労働者の給与は、ほぼすべての世代で正規労働者の給与を下回る。健康保険、厚生年金、退職金など各種制度の適用についても、正規と非正規の間には大きな格差がある。

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 沖縄県の非正規労働者は40・4%で、全国平均に比べかなり高い。コールセンターなどの派遣業、宿泊・飲食サービス業などの分野で就業者が増え、失業率は改善傾向にあるが、その半面、非正規雇用が多く、「雇用の質」が新たな問題として浮上しているのである。

 正社員になりたくてもなれない。仕方なく非正規社員として働きながら機会を待つことになるが、県内の正規雇用への転換率は23・3%(総務省、11年の調査)。かなりの狭き門である。

 県と沖縄労働局は昨年8月、そろって経済6団体を訪ね正規雇用枠の拡大を要請した。危機感の表れである。

 県労政・女性就業センターによると、13年6月末現在の労働組合の指定組織率は復帰後最低の10・6%。非正規雇用の増加がその背景にある。

 男性の場合、正規と非正規の有配偶者率の差が大きいともいわれている。

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 非正規雇用の待遇改善は待ったなしだ。賃金の引き上げ、昇級ルールの導入、正社員化の促進、社会保険の適用拡大など、労使がそれぞれの社の事情を踏まえて取り組んでほしい。

 大企業や大企業の正社員、投資家だけが恩恵を受け、所得格差が拡大・固定化するような経済政策であってはいけない。幸い連合も「非正規労働者の労働条件改善」を春闘の重点課題として位置づけている。企業をその気にさせるため、政府も制度面で待遇改善を後押しすべきだ。