【浦添】松本哲治市政のスタートから11日で1年を迎える。松本氏(46)は、政治や行政経験がないにもかかわらず、昨年2月の市長選では、若い市民を中心に1万9717票を獲得。政党や企業・団体に頼らない草の根運動で、4選を目指す現職や保革の相乗り候補を制した。異例の選挙戦で有権者の期待を集めたのが、前NPO法人代表の新人候補として訴えた“市民目線”の公約だった。就任1年目の市政運営や今後の取り組みなどについてインタビューしつつ、松本市政の1年を検証する。(通信部・平島夏実)

分かりにくさ露呈
[西海岸の環境影響評価]推進→凍結→解除

 キャンプ・キンザー沖を埋め立ててコースタルリゾートを造る西海岸開発事業(第2ステージ)については「ゼロベース見直し」を掲げて当選し、「埋める埋めないも含めてあらゆるオプションを議論する」とした。ただし、環境影響評価(アセスメント)には着手。その後まもなく凍結、解除するなど迷走した。アセスをしながら計画を見直す考えだったが、一般的には「アセス着手=埋め立て推進」のため、分かりにくいと批判された。

 市長は昨年8月16日の記者会見で、アセス推進を明言した。その3日後に「一時凍結」を発表。凍結の理由として、アセスをいったん進めると現行計画見直しが難しくなると説明したが、その後の9月市議会では、埋め立てを共同で進めてきた那覇港管理組合との信頼関係が問題だったと訴えた。

 凍結から約2カ月後、市長は関係者にアセス再開を伝達した。現在は環境現況調査が進められているが、現行計画見直しに向けた具体的な議論はこれからだ。

答弁 事実上の公約撤回
[普天間飛行場の移設先]県外・国外→辺野古容認

 米軍普天間飛行場の返還問題について、昨年2月の市長選に伴い沖縄タイムスが実施したアンケートでは「県外・国外移設」と回答していた。だが就任から約10カ月後、辺野古移設容認に転じた。

 松本市長は昨年12月の市議会で「県内、県外、国外を問わず候補地としてのすべての可能性を検討し、議論を尽くすことが重要だ」と答弁した。

 「県内移設に辺野古は含まれるのか」との質問に「すべての可能性を検討するということだ」と明言を避けた。さらに「県外・国外が望ましいという思いは今も変わっていない」と釈明したが、答弁の趣旨は事実上の辺野古容認であり、公約撤回に当たる。

 容認の理由については「普天間飛行場の除去を最優先すべきだ」と説明。浦添市は世界一危険といわれる普天間飛行場に隣接し、市民の生命、財産、生活環境が脅かされていると訴えた。

明確な姿勢 後退否めず
[那覇軍港の浦添移設]明確に反対→判断保留

 米軍那覇港湾施設(軍港)の浦添移設について、市長は昨年2月の市長選告示直前、美しい海を埋め立てる必要はないとして容認から反対へ転換した。沖縄タイムスのアンケートにも「明確に反対」と明記し、革新票を固めたとされる。だが、就任後には「基本的に反対」「現在は是非について判断しない。しかるべき時期に責任を持って判断したい」とトーンダウンした。防衛省に対し、移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の実施も了承した。

 市長は公約撤回ではないと主張しているが、共産党浦添市委員会、一坪反戦地主会浦添ブロック、自身の市長選を支えた選対本部のメンバーなどからも疑問の声が上がっている。

 防衛省関連補助金のうち軍港受け入れが条件となる再編交付金は、2013年度、浦添市の要求通り満額の約1億800万円が交付決定されている。

宮崎氏に接近強まる保守色
[政治姿勢]市民党→自民党?

 「権力や政党と戦う完全無所属市民代表」を掲げて当選したが、次第に自民党化が指摘されるようになった。特に顕著なのは市長選で対立関係にあった宮崎政久衆院議員(自民)との接近だ。市議会を安定させたい市長と、次期衆院選に向け基盤強化を図りたい宮崎氏の思惑が一致したとみられ、保守色を強めている。

 昨年夏の参院選では、自民と公明が開いた総決起大会に松本市長が参加。同年11月には北谷町長選に出馬する自民推薦候補の事務所開きに足を運んだほか、宮崎氏の激励会の発起人に名を連ねた。

 知事の辺野古埋め立て承認後は、宮崎氏、島尻安伊子参院議員(自民)、県内の保守系3首長とともに知事と意見交換し、県政運営を支える考えを伝えた。一方宮崎氏は昨年10月、松本市政に協力する議員連絡会議の立ち上げに尽力した。

 松本氏の後援会は現在、会長不在で事実上機能していない。元後援会メンバーらは市長の政治姿勢に不信感を募らせており、市長側は新しい後援会が必要との考えを示している。