沖縄県ではここ数年結核の集団感染がたびたび起きており、妊婦さんが亡くなったり、多くの児童が感染・発病したりして、マスコミでも大きく取り上げられました。ここまで医療が進歩しているのに、なぜこのようなことが起きてしまうのかと疑問に思われるかもしれませんが、結核診断の遅れには大きく分けて二つの要因があると言われています。

 一つは患者さん側の要因で、長引く咳(せき)などの症状があってもなかなか病院を受診しないことが挙げられます(受診の遅れ)。一方で、もう一つの重要な要因は医療者側にあり、患者さんに結核を疑う症状があるにもかかわらず、担当医が胸部X線や痰(たん)の検査を後回しにすることが挙げられます(診断の遅れ)。「病院を受診しているのに診断されないなんて!」と我々医療者は怒られてしまいそうですが、残念ながらこのようなことは実際に起きています。

 咳そのものは、風邪や気管支炎、肺炎、インフルエンザ、喘息(ぜんそく)など多くの病気で見られる症状であり、それだけですぐに結核を疑うことは正直難しいのですが、2週間以上長引いている、食欲低下や体重減少がある、寝汗をかくなどの症状を伴っている場合には結核の可能性が高くなってきます。また、結核発症のリスクの高い人(高齢者、糖尿病がある、透析を受けている、免疫を抑える薬を飲んでいる、過去に結核に罹(かか)ったことがあるなど)にこれらの症状が見られた場合は特に注意が必要です。

 ちなみに、結核には肺外結核といって、首などのリンパ節が腫れたり(結核性リンパ節炎)、胸に水がたまったり(結核性胸膜炎、昔は俗に「肋膜(ろくまく)炎」と呼ばれていました)、下痢をしたり(腸結核)するタイプもあり、必ずしも咳の症状があるとは限りません。これらの肺外結核は、肺結核以上に診断に難渋することがありますが、肺結核を合併していなければ他人へ感染させてしまうことはありません。

 結核は、経過が長いことや他の病気と症状が似通っていることから、患者さんも医療者もその存在をついつい忘れてしまう厄介な病気です。しかし、前述したような症状やリスクがある場合は、ぜひ結核を心配して医療機関を受診してください。そして、「結核は大丈夫ですか?」と担当の先生に直接聞いてみてください。実はその一言が、結核の早期診断に結びつくきっかけになるかもしれません。(田里大輔・北部地区医師会病院)