沖縄を訪れている米国のキャロライン・ケネディ駐日大使は12日、那覇市のホテルで、稲嶺進名護市長に会い、米軍普天間飛行場の辺野古移設について意見を聞いた。

 米側からの申し出で、当日になって急に決まった日程である。

 稲嶺市長は、ジュゴンやサンゴの写真を見せながら説明し、生物多様性に富んだ辺野古の海を「埋め立てるべきではない」と訴えた。ケネディ大使から明確な回答はなかったが、「非常に関心を持っておられる雰囲気だった」(稲嶺市長)という。

 会談時間約20分。那覇市内で開かれたレセプションの前の、わずかな時間を利用しての会談であった。

 今回の沖縄訪問は、パブリック・ディプロマシー(対市民外交)の側面を色濃く持っている。外国の一般市民や世論、NGOなどに働きかけ、自国の政策への理解を深めたり影響を与えたりするのが対市民外交である。

 大使は、12日に糸満市の「平和の礎」や首里城、首里高校を訪ね、首里高では高校生と親しく接する機会を持った。ここにも本人が得意とする対市民外交の性格がよく表れている。

 他国の世論を正確に把握し、「大統領や国務大臣などに報告・助言する」のも対市民外交の重要なねらいである。

 過重な基地負担と辺野古の海の生物多様性、沖縄の多数意見を正面から受け止め、政策判断を誤らないようオバマ大統領に適切な助言をすること-ケネディ大使にはそれを求めたい。

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 ケネディ大使は午前中、仲井真弘多知事に会った。面談時間約25分。大使は「burden(重荷)」という言葉を使って、こう語った。

 「基地の重荷の軽減に力を尽くしていかなければならない」

 普天間の危険性除去だけに焦点を当てると、辺野古に移設することが「重荷」の解消につながるように見えるが、それは事の一面を語っているにすぎない。

 県内に米軍飛行場を新設し、北部地域に拠点集約化する試みは、県民に半永久的に負担を強いることを意味する。そもそも「負担軽減」と「抑止力維持」という相反する政策を沖縄の中だけで達成しようとすることに大きな無理がある。

 オバマ大統領に近い「人権重視のリベラル派弁護士」と形容される大使にぜひ考えてもらいたいことがある。それは米国民の権利保護と沖縄住民の権利保護の関係である。

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 もし米本国で辺野古と同じような事例が起きた場合、米政府は、基地建設のため米国民や地元自治体の意思を無視して埋め立てを強行するだろうか。

 沖縄では、米軍は地位協定によって「特権づくし」の状態にある。地域住民は、米国民が享受している米本国の法律の保護を受けられず、日本の国内法による保護も受けられない場合がある。

 米軍絡みの事件事故が発生したとき、地域住民はしばしば「法のクレバス」に落ち込む。それが沖縄の現実だ。