八重山地区内で異なる中学校公民教科書が使われている問題で、文部科学省は県教育委員会との意見交換を打ち切り、2月中にも竹富町に地方自治法に基づく是正要求を出す方針を決めた。

 是正要求は、地方自治体などの事務処理に法令違反があるときや明白に公益を害している、と判断された場合に国が行う。従わない場合も罰則はないが、自治体側は改善の法的義務を負う。

 竹富町教委の対応は是正要求の対象になるのだろうか。

 教科書採択に関する法律は「各市町村教委が教科書を採択する」とした地方教育行政法と、「採択地区ごとに同一の教科書を選ぶ」とする教科書無償措置法が併存する。

 竹富町は地方教育行政法を根拠に、合法との立場だ。

 文科省は、石垣市と与那国町を含む近隣の3市町で構成する採択地区協議会で選んだ教科書を、竹富町が「拒否」し、教科書無償措置法に違反しているとの認識だ。

 が、同法が定めるのは、採択地区内の関係教育委員会が協議し、同一の教科書を採択することだ。同法に照らせば石垣市、与那国町を含む3市町の教育委員会で一致を求めるのが筋だろう。竹富町のみに「是正」を要求することは甚だ疑問だ。

 下村博文文科相は、竹富町が従わなかった場合、違法確認訴訟を起こす構えもみせている。

 国が求める「正常化」とは強権の発令によって、教育現場に混乱を引き起こすことではないはずだ。強く自制を促したい。

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 竹富町は、小中学生の学力向上施策として「ぱいぬ島っ子プラン」を推進している。人間関係の濃い離島の強みを生かし、学校、家庭、地域が連携して子どもたちの「生きる力」を伸ばす取り組みだ。

 是正要求は、離島自治体のこうした地道な教育実践にも水を差しかねない。

 沖縄では、教育にとどまらず、基地に関する自治行政をめぐっても、国による「是正要求」の対象にされかねない状況を抱えている。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設に関し、名護市の稲嶺進市長は「名護市域の財産や環境、市民の安心安全をしっかり管理し守る責務がある」と述べ、市有地の使用許可などの権限を盾に移設工事を阻止する考えを示している。これに対し、総務省は「市が事務手続きを行わない場合は、政府が県を通して(名護市に)是正要求することも考えられる」との見解を示している。

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 安倍政権は、教科書検定基準の見直しや道徳の教科化など、戦後教育の大転換となる政策を矢継ぎ早に打ち出してきた。昨年12月に閣議決定した、「国家安全保障戦略」では「わが国と郷土を愛する心を養う」と明記した。

 個人の心の中身にまで国が踏み込み、干渉する。教育や思想、自治への国の過剰な介入は、戦後民主主義の理念や価値観とは相いれない。が、こうした流れに、日本社会は抵抗する力を失っている。

 沖縄が直面しているのは、日本を覆いつつある国家主義の影ではないか。