東日本大震災の津波で流された松の木から作った「津波バイオリン」の県内初の演奏会が14日、那覇市で開かれた。今後数百年、世界各地で「あの日」を伝える語り部。「芭蕉布」など沖縄民謡を、染み入るような澄んだ音色で奏でた。

美しい音色で観客を魅了した「震災バイオリン」=14日午後、那覇市久茂地・タイムスホール

 制作したのは、世界的な名器の修復も手掛ける東京都の中澤宗幸さん(73)。かつて7万本の松林が広がった岩手県陸前高田市で、処分を待つ流木の中から材料を選び出した。

 「被災者に語り掛け、慰める優しい声に」。海水の染みこんだ松から作るには、通常の3倍の3カ月かかったという。その後、枯れてしまった「奇跡の一本松」からも、心臓部の部品「魂柱」を譲り受けた。

 「千の音色でつなぐ絆」と銘打ち、千人に演奏してもらおうと国内外を回っている。「鎮魂の祈りがこもったバイオリンを、思いを持った人が弾いて、思いを持った人が聞く。音楽の素晴らしい力が生まれる」

 この日、タイムスホールの約300人の観客の中で涙を浮かべて演奏を見守った。「沖縄でいただいた気持ちを、これからバイオリンと訪れる被災地に伝えたい」と話した。

 232番目の演奏者になったのは、県内で活躍するバイオリン奏者の阿波根由紀さん(45)。「ずっと弾きたいと夢見ていた。本当にいい音」と感激した。

 演奏会はNPO沖縄ユースオーケストラ(上原謙代表)などでつくる実行委員会が主催。被災3県出身者の現状報告もあった。